平成14年度 病害虫発生予察情報第10号

7月予報

平成14年6月25日 北海道病害虫防除所
(連絡先:Tel.0123(89)2080

A.水稲
B.小麦
C.豆類
D.ばれいしょ
E.てんさい
F.りんご
G.たまねぎ
H.あぶらな科野菜
I.野菜類全般

季節予報(付記)によれば、7月の天気は周期的に変わり、一時オホーツク海高気圧の影響を受ける時期があるが、気温・降水量とも平年並と予報されています。
このようなことから、多めの発生が予想される病害虫は、水稲のイネドロオイムシ、小麦の赤かび病、アブラムシ類、大豆のわい化病、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、小豆のマメアブラムシ、菜豆の黄化病、ばれいしょのアブラムシ類、てん菜のテンサイモグリハナバエ(一部地域)、たまねぎのネギアザミウマがあげられます。

A.水稲

いもち病(葉いもち)  発生期:並  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 主要作付品種の葉いもち抵抗性は弱〜やや弱である。
    2. 予察田では現在のところさし苗の初発は認められていない。
    3. 7月の気温、降水量は平年並と予報されている。
       
      地点 品種名 さし苗初発期 さし苗接種時期(本年)
      本年 平年
      大野 きらら397 未発生 6月27日 5月29日
      しまひかり 未発生 7月6日
      比布 きらら397 未発生 6月27日 6月6日
      ほしのゆめ 未発生 6月20日
      長沼 きらら397 未発生 - 6月3日
      ほしのゆめ 未発生 -

  2. 防除対策
    1. 取り置き苗を本田や畦畔に放置せず処分する。
    2. 多肥は本病の発生を助長するので、窒素質肥料の過剰な分・追肥をさける。
    3. 葉いもちは、早期発見に努め、初期防除を励行する。
    4. 葉いもちの初発時期は初発予測システム「BLASTAM」の判定結果を参考にし、好適日・準好適日の出現約1週間後にほ場を見回り、初発葉の発見に努める。特に常発地帯 や前年度多発したほ場、葉色の濃い部分を注意して観察する。
    5. 穂いもち防除の1回目は出穂期に行い、適期を失しないように注意する。特に有人ヘリによる防除では適期に散布できない場合があるため状況に応じて地上散布を行う。

    BLASTAMの運用開始
    水稲のいもち病初発生期予測システム「BLASTAM」による広域発生期判定結果を公開しています。主要栽培地帯約50地点について判定し、随時更新していきます。



ヒメトビウンカ  発生期:既発(やや早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の発生は日高・桧山支庁管内で多かったが他の地域では少なく、被害面積も全的に小さかった。
    2. 比布町の予察田では、畦畔・水田ともに発生量は平年並に推移している。長沼町の予察田でも、発生量は少なめである。
    3. 7月の気温・降水量はともに平年並と予報されていることから、発生量は平年並に とどまるものと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 7月下旬以降問題となる吸汁害は、株当たり寄生頭数50頭(20回すくい取り換算頭数で成虫1800頭)以上になると発生する恐れが高いとされる。



イネドロオイムシ  発生期:既発(早)  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の発生は日高支庁管内で多めとなったが、全道的には平年並で、被害面積も小さかった。
    2. 比布町の予察田では、成虫・卵塊数・被害のいずれも平年並に推移している。一方、大野町の予察田では、卵塊数・幼虫数・被害のいずれも多めである。長沼町の予察田でも、平年値はないものの成虫・卵塊数ともにやや目立つ。長沼町では既に蛹も確認されており、発生は依然として早めである。
    3. 巡回調査によると、上川・日高支庁管内の一部で卵塊が目立つが、要防除水準(卵塊数2個/株)に達したほ場はない。
    4. 7月の気温・降水量はともに平年並と予報されていることから、発生量は平年並から地域によってはやや多くなるものと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 老齢幼虫になると防除効果が劣るので注意する。
    2. 薬剤は防除基準に準拠して使用するが、有機りん系及びカーバメート系薬剤に抵抗性の個体群が広範囲に認められているので、薬剤の選定には十分注意する。


フタオビコヤガ  発生期:既発(並)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の第3回成虫の誘殺数は、大野町・岩見沢市・比布町いずれにおいても平年値を大きく下回った。全道における前年の発生量も平年並だったことから、越冬密度は低いものと推察される。
    2. 6月中旬時点で、比布町・長沼町の予察田いずれにおいても発生量は平年並で、大野町では被害は認められていない。
    3. 7月の気温・降水量は平年並と予報されており、発生量は平年並と見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 7月下旬以降に発生する2回目以降の幼虫が防除対象である。
    2. 6月中・下旬〜7月上旬に現れる1回目幼虫や 、水面に浮いている笹舟型の蛹が目立ったら、次世代の発生に注意する。
    3. 若齢幼虫期に防除基準に準拠して茎葉散布を実施する。


アカヒゲホソミドリカスミカメ  発生期:既発(早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 第1回成虫の発生期は、比布町では6月上旬、長沼町では5月下旬で、平年よりも早い。
    2. 予察田における成虫の発生量は、比布町では平年並、大野町ではやや少なめに推移している。長沼町においても、発生量は特に多くはない。
    3. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量は平年並のまま推移すると見込まれる。
    4. 7月に一世代を経過し、第2回成虫が水田に侵入する。7月の気象が高温・小雨に経過した場合は密度増加の可能性があるので、発生量の推移には注意が必要である。

  2. 防除対策
    1. 第1回成虫発生期に,主な生息場所となるイネ科雑草を刈り取り、ほ場清掃に努める。上述のように本年は発生が早まっているので注意する。
    2. 本田での防除は出穂期と7日後の2回を原則として実施する。その後の散布は、間隔を7〜10日とし、散布予定日の2〜3日前に水田内すくい取りを行い、20回振り当たり2頭(「ほしのゆめ」では1頭)を水準として要否を決める。
    3. 水田に隣接する麦類およびイネ科牧草での発生に注意し、その周辺の水田は特にていねいに薬剤散布を行う。
    4. 多発が予想される場合は本種の生息場所である畦畔・雑草地など水田周辺を対象に7月中に薬剤散布する。


ニカメイガ  発生期:やや早  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 昨年の大野町・岩見沢市での誘殺数は平年より少なかった。一般田では渡島・空知・上川支庁管内で発生が認められたが、被害にむすびついたような地域はなかった。
    2. これまでの気象経過から、発生期はやや早まり、7月の気温・降水量が平年並と予報されていることから、発生量は平年並に少ないものと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 成虫発生(誘殺)最盛期(岩見沢市の平年値:7月4半旬)から7〜10日間隔で1〜2回茎葉散布を実施する。


B.小麦

赤かび病  発生量:<秋まき小麦>やや多,<春まき小麦>やや多
<5/31付け、注意報第3号発表>

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病の感染は、開花期が多湿条件下で経過すると多くなり、その後の降雨で発病が助長される。
    2. 秋まき・春まき小麦とも、出穂以降、低気圧や前線、オホーツク高気圧の影響で天気がぐずついた時期があった。7月の天気は周期的に変わりオホーツク高気圧の影響を受ける時期があると予報されているため、発病が助長され発生量はやや多くなると予想される。

  2. 防除対策
    1. 今後も気象経過に十分注意し、引き続き薬剤散布を行う。
    2. チオファネートメチル剤に対するM. nivaleの耐性菌はほぼ全道で確認されているので、薬剤の選定には注意する。
    3. 刈り遅れのないように注意し、刈取後収穫物を速やかに乾燥する。被害粒を除去するため、選別を強くし調整する。


うどんこ病  発生期:既発(早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察ほ(秋まき小麦)の上位葉の発生量は、平年並に経過している。
    2. 巡回調査の報告によると秋まき小麦では、次葉(止葉の1枚下の葉)に発生が認められていない地点が多い。
    3. 7月の気温、降水量は平年並と予報されている。 

  2. 防除対策
    1. 春まき小麦では発生動向に注意し、赤かび病との同時防除で対応する。穂・止葉・次葉の発病を抑えれば収量に影響がない。
    2. 耐性菌の出現を防ぐため、同一系統の薬剤を連用しない。


赤さび病  発生期:既発  発生量:やや少〜並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察ほにおける初発日は長沼町ではかなり早かったが、訓子府町で平年並、芽室町では平年より遅かった。現在の発生量は、長沼町では平年並、訓子府町・芽室町ではやや少なく経過している。
    2. 巡回調査によると、道央(石狩・空知・上川支庁管内)で次葉に発生が認められている地点があるが、発生量は少ない。道東ではほとんどの地点で発生は認められていない。
    3. 7月の気温、降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 赤かび病と同時防除で対応する。


アブラムシ類  発生期:既発(早)  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 現在の予察ほの秋まき小麦での発生量は、ムギクビレアブラムシは長沼町・訓子府町ともにやや多め、ムギヒゲナガアブラムシは長沼町ではやや多め、訓子府町では平年並である。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量は平年並からやや多めに推移することが予想される。

  2. 防除対策
    1. 収量に影響が出るのは1穂あたり寄生頭数7〜11頭程度である。ほ場内の穂に高い割合でこのような寄生を認めない限り薬剤防除は不要である。


C.豆類

炭そ病(菜豆)  発生期:既発(やや早)  発生量:並
    (小豆)  発生期:並         発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 芽室町の予察ほでは、菜豆の子葉に6月11日(平年:6月13日)、本葉に6月17日(平年:6月21日)に初発が認められた。
    2. 前年の発生量は菜豆では平年より少なかった。
    3. 本病は6月下旬から7月に多湿条件が続くと多発する。
    4. 7月の降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して発生初期から薬剤散布を行う。
    2. 灰色かび病、菌核病と同時防除を行う場合、ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤を1回目に散布すると有効である。


菌核病  発生期:並  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は開花期以降の低温・多湿で多発する。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 開花時期に注意し、薬剤散布にあたっては、大豆では開花の10〜15日目、小豆では7〜10日目、菜豆では5〜7日目に第1回目の散布を行い、その後必要に応じて、10日間隔で計3回散布する。
    2. 本病の発生が多いほ場では、1回目の防除にジカルボキシイミド系剤(プロシミドン水和剤、イプロジオン水和剤)、またはフルアジナム剤を散布すると高い効果が得られる。


灰色かび病  発生期:並  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は菌核病と同様、開花期以降の低温・多湿で多発する。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 菌核病に準ずる。
    2. フルアジナム剤の耐性菌が認められている地域では、1〜2回目に散布する薬剤の選択に注意する。
    3. 耐性菌の出現を防ぐため、ローテーション散布を行う。
       


茎疫病(大豆・小豆)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 7月の降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 転換畑や排水不良畑など過湿土壌で発生しやすいので、ほ場の排水に努める。
    2. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


べと病(大豆)  発生期:並    発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は多湿条件で多発する。
    2. 7月の降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 抵抗性が弱の黄・青大豆品種および黒大豆では、防除基準に準拠して薬剤散布を行う。また、やや弱以上の黄・青大豆品種では防除の必要はない。
    2. 本病の要防除水準は、開花始めの上位葉の病斑面積率で2.5%(葉全面に病斑が見られる程度)である。


わい化病(大豆)    発生量:やや多
黄化病(菜豆)     発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 6月のジャガイモヒゲナガアブラムシの飛来量が多かった。

  2. 防除対策
    1. 「ジャガイモヒゲナガアブラムシ」の項を参照。


食葉性鱗翅目幼虫  発生期:既発(やや早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の発生量は一部地域を除いて平年並だった。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、被害程度は平年並と見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 大豆は開花期から莢伸長期に葉を食害されると最も収量に影響する。この時期の食葉面積率が20%に達すると5%程度の減収となる。
    2. 上記被害に至る寄生頭数は、大豆1個体当たり開花前:1頭、開花期頃:2頭、莢伸長期以降:3頭である。どの時期においてもそれ以下であれば、防除は不要である。


アズキノメイガ(小豆・菜豆)  発生期:並  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の予察ほにおける発生は、長沼町・芽室町・訓子府町いずれも平年並だった。
    2. 越冬蛹の羽化時期は積算温量よりも水分(降雨)の影響が強いとされている。
      例年の発蛾最盛期は7月中〜下旬である。
    3. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生期・発生量は平年並と見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 産卵盛期から7〜10日間隔で薬剤散布を行う。


ハダニ類  発生期:やや早  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. これまでの気象経過から、発生期はやや早まり、7月の気温・降水量が平年並と予報されていることから、発生量は平年並と見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 薬剤抵抗性の発達を避けるため、同一薬剤の過用をさける。


ジャガイモヒゲナガアブラムシ(大豆)  発生期:既発(早) 発生量:やや多
<5/31付け、注意報第2号発表>

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察ほにおける発生量は、訓子府町では多め、長沼町ではやや多めである。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや多めに推移すると見込まれる。

  2. 防除対策
    1. アブラムシの寄生状況(菜豆では有翅虫の飛来状況)に注意して、防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


マメアブラムシ(小豆)  発生期:既発(早)  発生量:やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察ほで、例年よりも早く発生を確認し、6月5半旬時点で寄生株率が40%に達している。これまでの好天経過から、他の地域でもやや早めに密度が高まっている可能性がある。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや多めになるものと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 寄生は株単位に集中することが多く、寄生株から周辺株への分散は活発ではない。ほ場全体の発生状況に注意し、必要に応じて薬剤防除を行う。


D.ばれいしょ

軟腐病   発生期:並  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は高温・多雨および多窒素栽培で多発する。
    2. 7月は気温・降水量とも平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。
    2. 耐性菌の出現を防ぐため、同一系統の薬剤を連用しない。


疫病    発生期:やや早   発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は低温多雨で発病する。
    2. ばれいしょの生育は平年よりも1週間ほど早いこと、また初発生期予測システム「FLABS」の予測結果から、初発日はやや早いと予想される。
    3. 7月は気温・降水量とも平年並と予報され発生量は平年並と予想される。

      予察ほにおけるFLABSの予測結果
      地点 品種名 萌芽日 累積値 基準月日 予測初発日
      大野 男爵薯 5月14日 - 6月3日 6月24日
      長沼 農林1号 5月27日 - 6月22日 7月8日
      男爵薯 5月31日 - 6月22日 7月8日
      芽室 男爵薯・紅丸 5月26日 - 6月17日 7月4日
      訓子府 男爵薯・紅丸 5月30日 11 - -
      注1)累積値は6月23日現在
      注2)訓子府町のアメダス地点:置戸町境野
      注3)大野町の予測初発日は基準月日が6月14日以前のため、次の式で算出した参考データとする(予測初発日=0.761×基準月日+58.185)

  2. 防除対策
    1. 「FLABS」による予察情報を活用し初期防除の適正化をはかる。
    2. 天候や防除薬剤の残効期間などを考慮して散布間隔を決定する。

    FLABS運用中
    疫病の初発生期予測システム「FLABS」の予測結果を随時更新しています。初期防除の適正化にお役立て下さい。


アブラムシ類  発生期:既発(早)  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 定点ほにおけるジャガイモヒゲナガアブラムシの発生量は、長沼町・訓子府町いずれも多めである。長沼町ではモモアカアブラムシの発生が4〜5半旬早く6月上旬に始まった。ワタアブラムシも平年より1ヶ月程度早く、長沼町では5月下旬〜6月上旬、訓子府町では6月中・下旬に認められた。発生量は平年同時期と比べると多めである。
    2. 巡回調査によると、渡島支庁管内ではワタアブラムシ、空知支庁管内の一部ではモモアカアブラムシ、その他の地域ではジャガイモヒゲナガアブラムシが優占している。
    3. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量は平年並〜やや多めと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。

ジャガイモシストセンチュウの植物検診を励行しよう

近年、ジャガイモシストセンチュウの発生地域が拡大傾向にあります。
最近の事例では、発生に気づいた時点で既にシストセンチュウが地域内の多くのほ場で検出されたこともあります。
7月は本種を対象にした植物検診の実施時期にあたります。植物検診は、シストセンチュウの早期発見につながり、新規発生地域における発生ほ場の拡大を未然に防ぐ上でも、極めて重要です。

  • 植物検診は、シストの着生する時期(道央・道南:7月上・中旬、道東・道北:7月中・下旬)に実施します。時期が遅れるとシストが離脱してしまいます。
  • ジャガイモ株を引き抜き、細根に直径0.6mm程度の白〜黄色のシストが付着していないかを調査します。
  • 調査場所は塊茎の堆積場所や畑に入る通路沿いの部分、調査株は生育不良株や葉の黄化している株を選ぶことが大切です。
  • なるべく多くの農家ほ場を調査できるように配慮して毎年の調査ほ場を選択するのが、発見効率を高める上で有効です。
  • 継続が基本です。見つからなくても気を抜かずに毎年の実施を心掛けましょう。


E.てんさい

褐斑病  発生期:並  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は高温・多湿で多発する。
    2. 7月は気温・降水量とも平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して、発病株率が50%に達した時点で薬剤散布を開始する。
    2. 天候や薬剤の残効期間などを考慮して散布間隔を決定する。
    3. 耐性菌の出現を防ぐため、同一系統の薬剤を連用しない。


テンサイモグリハナバエ  発生期:既発(早)  発生量:並〜やや多

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 昨年は芽室町の予察ほでは多めの発生だったが、全道的には少発にとどまった。
    2. 第1世代の産卵量は長沼町・訓子府町では少ない。芽室町の予察ほでは多めで、十勝管内の一部の一般ほ場でも多めの産卵量が確認されている。
    3. 7月の気温は平年並と予報されており、第2世代の発生量は平年並、地域によってはやや多めと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 12葉期に、被害葉率が42%に達しなければ防除は不要である。このような被害に至る場合には、被害株率は100%に達している。
    2. 通常の発生では、てんさいの生育が進み被害が軽いので単独防除の必要はなく、ヨトウガ等との同時防除が可能である。
       


ヨトウガ(第1回)  発生期:既発(早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 産卵量は長沼町ではやや多め、芽室町・訓子府町では平年並である。被害は芽室町では平年より4半旬早く認められているが、長沼町・訓子府町では認められていない。

    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、被害は平年並程度にとどまるものと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 茎葉散布は被害株率が50%に達した時点で行い、1回の防除で十分である。


F.りんご

黒星病  発生期:既発(早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察園での発生量は、「ふじ」では平年並、「スターキングデリシャス」 では平年よりやや多く推移している。
    2. 巡回調査によるとほとんどの園地で発生は認められていない。
    3. 7月の降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を継続する。


斑点落葉病  発生期:既発(早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は高温多湿で多発し、特に2〜3日の連続した降雨で急増する。
    2. 長沼町の予察園での初発は5月24日(平年:6月22日)で平年より早かったが、現在のところ発生量は少ない。
    3. 7月の気温・降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を継続する。


ハダニ類   発生期:既発(早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 現在の発生量はリンゴハダニが長沼町の予察園で少なめ、一般園の仁木町・余市町では平年並となっている。ナミハダニは長沼町で未発生、仁木町・余市町でも少ない。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量は平年並に推移するものと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 同一系統の薬剤を使用すると薬剤抵抗性の発達が急速に進むので、異なる系統の薬剤をローテーション散布する。
    2. 一部の地域のナミハダニで、ピラゾール系剤、BPPS水和剤およびヘキシチアゾクス水和剤で感受性の低下がみられている。該当する地域では同系統の剤を同一年度に散布することを控える。


ハマキムシ類  発生期:既発(早) 発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町におけるフェロモントラップによる成虫の誘殺始は早かった。誘殺数はリンゴコカクモンハマキ・リンゴモンハマキともに平年並にとどまっている。また、余市町、仁木町でも、両種ともに誘殺数は平年並に推移している。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量は平年並と見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


キンモンホソガ 発生期:既発(早)  発生量:やや少

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. フェロモントラップによる昨年秋季の成虫誘殺数は余市町で多かった。一般園における発生量は多めだった。
    2. しかし、第1回成虫の発生量は長沼町・仁木町・余市町いずれにおいても少ない。
    3. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量はやや少なめになるものと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


モモシンクイガ  発生期:既発(やや早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 前年の発生量は一般園では少なめで、長沼町の予察園でも秋季の成虫誘殺数が少なかった。
    2. 現在、長沼町の予察園では誘殺開始直後である。余市町での誘殺数は平年並に推移している。
    3. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、被害は平年並と見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


G.たまねぎ

白斑葉枯病  発生期:並  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察ほでは、長沼町(平年初発:6月18日)、訓子府町(平年初発:6月30日)と  も未発生である。
    2. 本病は高温・多湿条件で多発する。
    3. 7月の気温・降水量は平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して初発前から薬剤散布を行う。


ネギアザミウマ  発生期:既発(やや早)  発生量:やや多
<6月14日付、注意報第4号発表>

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 予察ほにおいては、長沼町・訓子府町ともに成・幼虫いずれも多く、特に幼虫の密度増加と寄生株率の伸びは顕著である。
    2. 本種は高温乾燥条件を好み、降雨によって増殖が抑制される。これに対し、7月の気温・降水量は平年並と予報されている。
    3. 一般ほでは6月中の防除による密度抑制が期待されるが、現状の発生密度が高いほ場では、引き続き発生が多めとなる可能性がある。

  2. 防除対策
    1. 防除開始時期は、成虫の寄生株率が10%以上になったら10日以内、または簡易トラップで多飛来が認められてから5日以内とする。
    2. 追加防除は、寄生程度指数20、寄生株率50%をめやすに行う。
       
      予察ほでの発生状況
      月・半旬 長沼町 訓子府町
      成虫数(/25株) 幼虫数(/25株) 寄生株率(%) 成虫数(/25株) 幼虫数(/25株) 寄生株率(%)
      本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
      6.I 7 0.0 0 0.0 24 0.0 20 0.8 0 0.0 56 2.9
      6.II 18 0.4 10 0.0 40 1.2 47 2.2 3 0.7 60 9.3
      6.III 19 1.8 37 5.1 60 10.4 64 5.9 11 0.6 92 19.3
      6.IV 32 5.7 431 7.2 88 21.7 84 20.2 254 3.3 96 67.0


H.あぶらな科野菜

軟腐病  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は高温・多雨および多窒素栽培で多発する。
    2. 7月は気温・降水量とも平年並と予報されている。

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。
    2. 耐性菌の出現を防ぐため、同一系統の薬剤を連用しない。
    3. だいこんでは、播種後25〜30日目に1回目の薬剤散布を実施する。


コナガ  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. フェロモントラップによる誘殺数は、各定点ともほぼ平年並となっている。長沼町の予察ほでは、産卵は少ないものの6月中旬以降芯葉を主体に加害が開始している。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されており、現在までの成虫誘殺数からみて、幼虫による被害は平年並になると見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 薬剤抵抗性が発達した害虫なので、ローテーション散布を実施する。なお、合成ピレスロイド系薬剤では抵抗性個体群が出現しているので単剤では使用しない。
    2. 防除にあたっては他害虫の発生に注意し、効率的な防除体系を組み立てる。
       


モンシロチョウ  発生期:既発(並)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察ほでは、幼虫の発生量は平年並である。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されており、現在の発生量からみて、平年並の発生にとどまるものと見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 成虫の飛来が目立ち産卵が多いほ場では、防除基準に準拠して薬剤散布を行う。
    2. 防除にあたっては、他害虫の発生に注意し、同時防除できる薬剤を選択する。


ヨトウガ  発生期:既発(やや早)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 長沼町の予察ほ(キャベツ)では、6月5半旬に若令幼虫による加害が認められた。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されている。昨年の発生は葉菜類では多かったが、他作物も含めた全体としては平年並だったことから、被害は平年並程度と見込まれる。  

  2. 防除対策
    1. 防除基準に準拠して薬剤散布を行う。


I.野菜類全般

灰色かび病(施設栽培)  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 本病は低温・多湿条件で多発する。施設栽培では管理条件によって発生が大きく左右される。
    2. 7月の気温、降水量は平年並と予報されている。
    3. 夏期はハウス内が高温になりやすいため、発病が抑えられることが多い。

  2. 防除対策
    1. 換気、灌水などハウス管理を適切に行い、発病に好適な環境を作らない。また、発病葉・果実のつみ取りを行い、伝染源をハウス内に放置しない。
    2. 多発してから薬剤散布しても効果は期待できないので、発病初期からの防除を心がける。
    3. ジカルボキシイミド系剤、ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤の耐性菌が確認されているため、薬剤の選択にあたっては防除基準に準拠しローテーション散布を実施する。


ハダニ類  発生期:やや早  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. これまでの気象経過から、発生はやや早まる可能性がある。7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生量は平年並と見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 薬剤抵抗性の発達を避けるため、同一薬剤の連用・過用をさける。


アブラムシ類  発生期:やや早  発生量:並

  1. 発生経過と予報の根拠
    1. 各種アブラムシの発生が他作物で早まっている。
    2. 7月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、発生期はやや早く、発生量は平年並になると見込まれる。

  2. 防除対策
    1. 発生状況に注意し、発生初期に薬剤散布を行う。

付記

北海道地方 3か月予報

(7月から9月までの天候見通し)

平成14年6月20日
札幌管区気象台発表

3か月(7〜9月)の気温の各階級の確率(%)

[気温]

北海道地方
20 50 30
 
低い
平年並
高い

3か月平均気温は、平年並の可能性が大きく、その確率は50%です。

[可能性の大きな天候見通し]

7月
天気は周期的に変わりますが、一時オホーツク海高気圧の影響を受ける時期がある見込みです。気温は平年並の見込みです。
8月
太平洋高気圧に覆われて、平年と同様に晴れて暑い日が多いですが、低気圧や前線の影響でぐずつく時期がある見込みです。気温は平年並の見込みです。
9月
天気は周期的に変わり、低気圧や前線の影響でぐずつく時期がある見込みです。気温は平年並の見込みです。

3か月間降水量は平年並でしょう。

要素 予報対象地域 7月 8月 9月
気温 北海道全域 平年並 平年並 平年並
降水量 北海道全域 平年並 平年並 多い



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