北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成21年9月、札幌市の果樹園においてりんご果実にシンクイムシによる被害が多発した。果実内部の幼虫を確認したところ、モモシンクイ、リンゴヒメシンクイに加えて尾部に櫛の歯状の尾叉を持つ幼虫が認められた。この幼虫は、翌年初夏に羽化した成虫によりスモモヒメシンクイGrapholita
dimorpha Komaiと同定された(盛岡市、奥俊夫氏)。 本種は主にスモモ類に寄生し、道内でもプルーンなどスモモ類を加害しているシンクイムシの多くは本種である。りんごに対してはこれまで長野県、福島県、群馬県などで加害事例があり、りんごでは果皮下を潜孔する被害が特徴的であるとされている。今回の発生園においても果皮下の被害は観察されたが、発生種が複数だったため本種による被害であるかは不明である。なお、これまでにも道内で果皮下を潜孔する被害果実からモモシンクイなど他種が見いだされたことがあることから、発生種の識別にあたっては被害症状による推測だけではなく、加害幼虫や羽化成虫による確認が必要である。本種幼虫は若齢ないし中齢期は体色が白色で、体長10〜13mm程度に達する老齢時には赤みを帯びる。色彩を含めモモシンクイとよく似ているが、尾叉を確認することでモモシンクイ幼虫との識別は可能である。 なお、道内の果樹園におけるフェロモントラップ調査により、本種は広く普通に発生していることが確認されている。過去数年のりんご果実からのGrapholita 属幼虫の確認事例はほとんどないことから、現時点ではりんごへの加害は多発条件下の偶発的な事例である可能性もある。 (中央農試・石狩農業改良普及センター本所) |
スモモヒメシンクイの成虫(中央農試 岩崎氏 原図) |