北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成14年、比布町において栽培されている株分けのねぎ(千本ねぎ)の葉に条斑症状が発生した。その症状は、条斑症状の他、葉の黄化や株の萎縮などで、比布町、旭川市、愛別町ではこれらの症状が蔓延しており、100%の発病となるほ場も認められた。症状の激しい株は選別して出荷を行っているが、手間がかかるため問題となっていた。 条斑症状を示す葉をDip法により電子顕微鏡観察したところ、ひも状ウイルスが観察され、その汁液をアカザ、シロザ、ソラマメ、たばこ(品種「キサンチNC」)、Nicotiana glutinosa、N.benthamiana に接種したところ、接種葉と上位葉のいずれにも症状を示さなかった。このことからネギ萎縮ウイルス(SYSV)の可能性が考えられた。そこで、ポティウイルス科特異的プライマーを用いてRT-PCR法よりウイルス遺伝子の一部を増幅し、外被タンパク質(CP)領域の塩基配列を解析した結果、本ウイルスのCP領域のアミノ酸配列は、ねぎ(下仁田ねぎ)から分離されたSYSVと100%一致した。さらに、モモアカアブラムシを用いて発病株からねぎのウイルスフリー株へ媒介試験を行ったところ、原病徴が再現された。以上のことから、本病はSYSVによるネギ萎縮病と同定された。 本ウイルスは、ほ場においては主にモモアカアブラムシ、ネギアブラムシ、キビクビレアブラムシ、ワタアブラムシ等のアブラムシによって非永続伝搬される。 (中央農試・上川農業改良普及センター本所) |
ねぎの萎縮病 (左:発病株および健全株,中央農試 佐々木氏 原図)
ねぎの萎縮病による条斑症状(中央農試 佐々木氏 原図) |