北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成22年度新発生病害虫]

はくさいのピシウム腐敗病(新発生)


  平成21年6月、北斗市内の露地トンネル栽培はくさい(品種「春笑」)で収穫期に株全体が軟化腐敗する症状が発生した。発病株ははじめ地際部から褐色水侵状となり、外葉が垂れ下がった。発病部にはやがて白色のかびを生じた。病斑部からは単一の糸状菌が分離され、分離菌をはくさいに接種すると原病徴が再現され、接種菌が再分離された。
 分離菌の菌叢は白色綿毛状で、菌糸の伸長は25℃で43.7〜45.4mm/24時間(直径)と極めて速く、生育適温は25〜30℃であった。菌糸は無隔壁で、主軸菌糸幅は6.4-7.2μm、遊走子のうは形成せず、単独培養で有性器官を形成した。蔵卵器は平均径21.0μmの球形で表面が平滑、蔵精器は主に底着で、卵胞子は非充満で平均径16.9μmの球形であった。以上の形態的特徴より本菌をPythium ultimum Trow var. ultimum、本病をハクサイピシウム腐敗病と同定した。また、分離菌のrDNA-ITS領域の塩基配列はP.ultimum Trow var. ultimumのものと100%一致し、形態による同定結果が支持された。
 本病の病徴は軟腐病と酷似するが、本病は発病部に白色のかびを生じる点と軟腐病特有の激しい腐敗臭がしない点で軟腐病と異なる。しかし、正確に診断するためには顕微鏡観察により無隔壁の菌糸を確認することが望ましい。

(道南農試・農業生物資源研究所・渡島農業改良普及センター本所)

はくさいのピシウム腐敗病 (発病株,道南農試 三澤氏 原図)

ピシウム腐敗病の発病株(道南農試 三澤氏 原図)

はくさいのピシウム腐敗病 (綿毛状の菌糸,道南農試 三澤氏 原図)

綿毛状の菌糸(道南農試 三澤氏 原図)


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