北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成19年7月、函館市内のハウス栽培いちご(品種「エラン」)において、収穫期に萎凋し、枯死症状を呈する株が発生した。発生ほ場では、平成20年および21年にもいちご(品種「サマールビー」)の栽培を行なったが、いずれの年次においても同様の症状が発生した。 発病株は葉柄基部が褐変し、クラウン表面にはクリーム色のかび(フザリウム属菌の大型分生子)を密生した。クラウンを切断すると外側からの褐変が認められた。発病部位からは単一の糸状菌が分離され、分離菌の接種により原病徴が再現され、接種菌が再分離された。分離菌の大型分生子は、まっすぐないしわずかに屈曲、隔壁数は主に3、大きさは26.0〜45.0×4.5〜5.4μmであった。小型分生子は、長さ11.5〜46.5μmのモノフィアライド先端に擬頭状に形成し、無色、単胞、楕円形、大きさは6.8〜14.0×2.5〜4.1μmであった。径6.2〜10.1μm、無色、円形の厚膜胞子を培地上で多数形成した。以上の結果より本菌を Fusarium solani (Martius) Saccardo 、本病をイチゴ乾腐病と同定した。 本病は山梨県で土壌中の塩類濃度が高いほ場で特異的に発生する病害として報告されたが、本事例でのECは0.1mS/cmであり、塩類濃度が適正なほ場においても本病は発生することが明らかとなった。本病の病徴は疫病に似るが、クラウン表面にクリーム色のかびを密生することから識別が可能である。 (道南農試・渡島農業改良普及センター本所) |
乾腐病の発病株(道南農試 三澤氏 原図)
地際部の分生子塊(道南農試 三澤氏 原図) |