北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成21年度新発生病害虫]

りんごの炭疽病(病原の追加)


 平成20年2月、七飯町で収穫後貯蔵中のりんご果実(品種「アルプス乙女」)が腐敗する症状が発生した。発病果は、陥没した褐色の病斑を形成し、病斑中央部にはクリーム色の分生子塊を生じた。病変部からは単一の糸状菌が分離され、分離菌を接種すると原病徴が再現され、発病部から接種菌が再分離された。分離菌のPDA培地上での培養菌そうははじめ白色のち灰色となった。菌糸の生育適温は25℃で、菌糸の生育速度は遅かった。分生子は両端が尖った紡錘形で、大きさは平均13.6〜16.6×4.5〜5.7μm、付着器は楕円形・棍棒状で凹凸はなく、大きさは8.4〜13.4×4.5〜6.4μmであった。ジエトフェンカルブ含有培地、ベノミル含有培地の菌そう直径は、無添加培地に対し20%以上生育した。以上より分離菌をColletotrichum acutatum Simmonds ex Simmonds、本病をりんご炭疽病と同定した。道内ではこれまでColletotrichum gloeosporioidesGlomerella cingulata)によるリンゴ炭疽病の発生は確認されているが、C.acutatum による炭疽病の発生が確認されたのは、本事例がはじめてである。なお、C.acutatum による炭疽病は、国内では野菜・花卉・果樹など23科29種で発生が確認されている。道内では既にいちご、プルーンで発生が確認されており、新たにりんご、マルメロで発生が確認された。本菌による炭疽病は、国内で1992年に発生を確認して以降、その分布域が拡大しており、道内でも拡大傾向にあるため注意が必要である。
 本菌の分生子は、両端がやや尖った紡錘形である点が特徴であり、分生子は病斑上にも多数形成されるため、容易に観察することができる。しかし、現場における正確な診断は困難であり、試験場へ診断依頼が必要である。

(道南農試・渡島農業改良普及センター本所)

りんごの炭疽病 (道南農試 三澤氏 原図)


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