北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成21年7月、千歳市の薬用とりかぶと栽培ほ場で、とりかぶとの葉に袋状のもぐり痕(潜葉痕)を形成する被害が認められた。潜葉痕は掌状葉の小葉先端付近に集中し、黒色の潜葉痕の内部には一カ所あたり数頭の幼虫が寄生していた。この被害部は短期間で枯死乾燥し、黒色の枯死部は一見すると病害による症状のように見えた。潜葉痕内部の幼虫は体長約3mm程度で体色は乳白色で、老熟した後に葉を脱出し、土中で暗褐色俵状の蛹になった。これら蛹からは、数日内に成虫が羽化した。成虫は体長2mm程度の小型のハエで、体色は黒色で、胸部側面上方および頭部は乳白色であった。本種は、外部形態及び交尾器によりハモグリバエ科のPhytomyza aconiti Hendel(トリカブトハモグリバエ(新称))と同定された。本種は過去に札幌市定山渓の野生とりかぶとからの採集例があり、今回他に上士幌町の野生とりかぶと、札幌市内の栽培とりかぶとへの寄生事例が確認された。本種の寄主植物はキンポウゲ科のトリカブト属、国外ではこれに加えてデルフィニウム属が知られており、発生地近辺の野生とりかぶとが発生源と考えられた。 (中央農試) |
トリカブトハモグリバエによる潜葉痕 (中央農試 岩崎氏 原図) |