北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
近年、道内各地で大豆の出芽不良が発生し問題となっている。本症状は、発芽前後に土壌中で腐敗・枯死する個体が多く、出芽しても子葉の腐敗や初生葉の奇形などにより生育が著しく劣ることが多い。不出芽の種子からは、Pythium属菌が高い割合で分離され、分離菌は3種類に類別された。その1つは、遊走子は未形成、蔵卵器の表面に棘状突起をもち、卵胞子は蔵卵器内に充満する等からP. spinosum Sawadaであった。他の1つは、遊走子は未形成、蔵卵器は球形平滑で概ね頂生、卵胞子は蔵卵器を満たさず胞子壁は厚いこと等からP. ultimum Trow var. ultimum であった。もう1種類は菌糸のふくらみ(hyphal swelling) を形成するが、有性器官が観察されていないため同定に至っていない。定法により接種した土壌に大豆を播種すると、3種の分離菌はいずれも強い病原性を示した。以上より本症状はこれらPythium属菌によるものと判断し、病名をダイズ苗立枯病(新称)とした。また、P. ultimum var. ultimum、 P. spinosum はともに、土壌接種で小豆、菜豆およびえんどうにも病原性を示した。なお、チウラム水和剤Fの2%種子塗沫処理は、本病に対して防除効果が確認されている。 (十勝農試・北植防・中央農試) |
苗立枯病による出芽不良個体 (十勝農試 清水氏 原図) |