北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成14年6月、厚真町のハウス内で、ほうれんそうの葉に袋状のもぐり痕(潜葉痕)を形成する被害が少発生ながら認められた。症状はハコベハナバエやアカザモグリハナバエ、テンサイモグリハナバエによる既知の被害と類似し、やや黒ずんだ袋状の潜葉痕内部に体長5mm程度の乳白色の幼虫が認められた。これら幼虫は老熟後葉から脱出し、土中で体長4〜5mm程度、濃赤色の蛹になった。ほうれんそうにおける同様の被害は平成20年6月に北見市においても認められ、短い蛹期間を経て羽化した羽化成虫は、いずれも上記類似種とは形態的に異なり、北海道大学の諏訪正明名誉教授によりハナバエ科のヒメモグリハナバエPegomya flavifrons (Walker)と同定された。
ほうれんそうに同様の被害を生じさせる類似種の内、ハコベハナバエは脚が黒色で、雌は赤褐色の額部に1対の額帯交叉剛毛、雄は第3,4腹板側縁に長剛毛をそれぞれ持ち、囲蛹尾端の後気門周辺に顕著な肉状突起がある。テンサイモグリハナバエ、アカザモグリハナバエは脚の一部または全体が黄褐色で、囲蛹尾端の後気門周辺に顕著な肉状突起を生じない。本種は、脚は黒色で囲蛹尾端の肉状突起が目立つ点ではハコベハナバエに似るが、雌の額部に額帯交叉剛毛を欠き、雄の第3,4腹板には顕著な長剛毛を欠くことでハコベハナバエとの識別が可能である。本種の寄主植物はこれまで国内ではナデシコ科のハコベ類のみが知られており、ほうれんそうに加害した事例はこれが初めてである。
(中央農試・北見農試) |
被害葉 |