北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成17年5月下旬に、後志支庁管内余市町の果樹園で栽培されているカーランツに、枝の髄部を穿孔加害する害虫による被害が発生した。また、平成19年5月下旬には、空知支庁管内長沼町の果樹園2園地のレッドカーランツ、ブラックカーランツに同様の被害が確認された。被害部は径3〜6mm程度の枝が主体で、被害枝は枝上の芽が全て枯死するか、新芽の発芽・生育が極めて劣った。長沼町の一園地では、樹高0.5m程度の若木で枝の大半が被害を受けていた。被害枝は、髄部が加害により空洞化し、内面は暗褐色を呈した。空洞となった枝内の一部に充満したおが屑状の茎組織の間に、体長11mm内外の鱗翅目の老令幼虫および蛹が認められた。また、蛹化場所に近い茎表面に、径1mm程度の脱出口が認められた。6月中旬〜下旬には、脱出口から上半身を乗り出した蛹から成虫が羽化した。また、6月下旬には、長沼町の発生園地のカーランツ葉上に、成虫が多数認められた。7月上旬には成虫の発生は終息し、2年枝以上の枝の表皮上に長径0.6mm短径0.4mmの短褐色楕円形でやや偏平な卵が散見された。羽化成虫は、スグリコスカシバ(新称)
Synanthedon tipuliformis
(Clerck)と同定された(名城大学、有田 豊教授同定)。本種はヨーロッパ原産で、オーストラリア、北米大陸、アジア極東地域にも侵入個体群の発生が知られている。 長沼町の被害園地で、5月下旬に被害枝の大半を切除して園地外に持ち出したところ、6月下旬の成虫発生期に成虫が認められなかったことから、剪定作業時の被害枝の園地外への搬出が本種被害を軽減する上で有効と考えられた。 (病害虫防除所) |
上左:幼虫、上右:蛹、下:成虫 |