北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成19年6月下旬から7月上旬に、胆振支庁管内厚真町のハスカップ園4園地で収穫したハスカップ果実から鱗翅目幼虫と顆粒状の虫糞が発見された。出荷前の検品作業中に果実中に黒色で体長1cm弱の小型の鱗翅目幼虫が認められ、この幼虫が内部を食害したと思われる被害果は表皮が萎縮していた。数日以内に、被害果実に孔をあけて幼虫が脱出すると共に虫糞を排泄することにより、被害果を含むパック単位で価値を損ねた。7月上旬に当該果実を収穫した園地を調査したところ、園地内の多くの樹に絹糸でクモの巣状に営巣した葉巻症状が認められ、その近くの果実に被害が多く認められた。 発見された幼虫にハスカップ葉・果実を与えて飼育したところ、葉や果実内部に対する食害は観察されず、果実の表面を溝状にかじり削る症状が認められ、7月下旬に体長 6mm程度の小型の蛾が羽化した。成虫の体色は明るい黄褐色で、翅には明るい褐色から暗褐色の複雑な模様が認められる。この成虫は、奥 俊夫博士(盛岡市)により、ハマナスホソバヒメハマキ Lobesia yasudai Bae et Komaiと同定された。本種を含む Lobesia 属は一般に花や果実を食害することが多い。一方、巻いた葉やキク科植物の頭花、果実のヘタの部分や害虫による加害により傷ついた部位など、狭い隙間のある場所を好んで摂食する性質があり、植物の種類だけでなく形状でも餌を選択しているものと思われる。発生園地は山林に接したり周囲を樹林に囲まれたりしており、このような環境で被害が多発する可能性がある。 (病害虫防除所・胆振農業改良普及センター本所・同東胆振支所) |
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