北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成19年度新発生病害虫]

いちごの炭疽病菌Colletotrichum acutatum による萎凋症状(新症状)


 いちごの炭疽病については、これまで Colletotrichum acutatum が葉枯性の炭疽病を起こし、 Glomerella cingulata が萎凋性の炭疽病を起こすとが報告されており、道内では C. acutatum による葉枯性の炭疽病のみが確認されている。平成18年6月、檜山支庁管内江差町および上ノ国町のいちご苗(品種「けんたろう」)でクラウンが外側から褐変し、株が萎凋する症状が発生した。褐変部からは単一の糸状菌が分離され、分離菌を接種したところ病徴が再現され、発病部からは接種菌が再分離された。分離菌の菌叢は、PDA培地上ではじめ白色のち赤みを帯び、分生子層に剛毛を形成しなかった。菌糸の生育適温は20-30℃で、菌糸の生育速度は遅かった。分生子は両端が尖った紡錘形で、大きさは平均11.6×4.0μm。付着器は楕円形・棍棒状で凹凸はなく、大きさは平均9.6×5.7 μmであった。 C. acutatum の特異プライマーを用いて分離菌を PCR法で検定したところ、目的とする増幅断片が得られた。以上の結果より本菌を C. acutatum Simmonds ex Simmondsと同定した。 C. acutatum による萎凋性の炭疽病の発生は本事例が初めてである。

(道南農試・檜山農業改良普及センター本所・中央農試)


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