北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成17年8月に、栗山町のいちご採苗圃場で、子株の葉、葉柄およびランナー先端に褐変・枯死症状が認められた。発病株ではクラウン内部および根にも褐変が見られ、病徴は疫病に類似した。罹病部からは、P.cactorum
、P.nicotianaeとは異なるPhytophthora属菌が高率に分離された。本菌の土壌接種または遊走子の噴霧接種により病徴が再現され、同一の菌が再分離された。本菌の遊走子のうは乳頭突起を欠き、大きさ30-87×22-54μm
(L:B=1.6)、洋なし形〜楕円形あるいは卵形である。菌糸は5〜32℃で生育し、最適温度25℃、35℃では生育しない。球形の厚壁胞子を形成する。同株性で、造卵器は直径22-56μm、造精器は側着または底着する。卵胞子は壁が厚く、直径24-46μm、非充満〜ほぼ充満する。本菌の、5.8Sを含むrDNA
ITS領域の塩基配列は、分離した6菌株で完全に一致し、他のPhytophthora属菌との相同性は90%以下であった。本菌は既往のPhytophthora属菌と形態学的に異なる特徴を有し、分子系統学的にも異なるため、所属についてはさらに検討を要する。以上から、イチゴ疫病の新たな病原として本菌Phytophthora
sp.の追加を提案した。
(病害虫防除所) |
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