北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成17年11月、十勝支庁管内で栽培されたばれいしょ(品種:「さやか」)の、加工原料として工場に出荷された塊茎表面に褐色の輪紋症状が発見された。病徴からウイルス病によることが疑われたため、
ELISA法およびマクロアレイ法によりウイルス病の検定を行った。その結果、いずれの方法によってもジャガイモモップトップウイルスのみが検出された。ばれいしょ塊茎に生じた特徴的な病徴、血清及び遺伝子診断の結果から、本病をジャガイモ塊茎褐色輪紋病と同定した。
本病の病原ウイルスはPotato mop-top virus (PMTV)で、本ウイルスは栽培畑ではジャガイモ粉状そうか病菌によって伝搬される。また、保毒種いもでは、低率であるものの伝染するとされる。ウイルスの寄主範囲は狭く、自然発生植物はばれいしょのみである。粉状そうか病菌によって伝搬されるため、粉状そうか病の発生しやすい低温多湿な環境で発病が多くなる。 本病の特徴は塊茎の表面に褐色の輪紋を生じ、切断すると内部は円弧状の褐変したすじ状病斑を呈する。また、薄く皮を剥くと、長いすじ状の褐変えそによる大きな輪紋が顕著に見え、褐色心腐のような塊茎中心の褐変や軟化腐敗は認められない。感染株における葉の病徴は、極めて軽微か又は現れないため、生育期間中における識別は困難である。塊茎にえそ症状を生じる類似病害として、輪腐病や青枯病などの細菌病があるが、これらの場合では塊茎内部が軟化し、切断面には維管束の褐変・腐敗、菌泥の漏出が見られる点などで区別できる。また、ジャガイモYウイルス(PVY)およびトマト黄化えそウイルス(TSWV)によるえそ症状では、病斑は不定形であり、本病に特徴的な塊茎表層のすじ状輪紋症状とは区別できる。 現在のところ、塊茎褐色輪紋病の防除に関する知見はほとんどなく、当面は粉状そうか病の防除対策を重点的に実施することが重要である。 なお、収穫時の塊茎に本病と疑わしい症状が認められた場合には、関係機関を通じて検定を依頼する。特に粉状そうか病の多発する畑では本ウイルスの発生に十分注意する。本病の詳細については平成18年度病害虫発生予察情報特殊報第1号を参照のこと。 (北農研セ・十勝農協連) |
|