北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
十勝南部において、平成5年頃から食用ゆりで鱗茎が黒変する症状が発生し、商品価値が著しく損なわれる被害が生じていた。
初め鱗片に小さな暗緑色病徴が現れ、組織が薄墨状に変色した後、黒変する。
症状は鱗片単位で認められる。貯蔵中に発生した場合には黒変部に灰白色の菌糸体が認められる。
病徴が進むと、最終的には鱗茎が広範囲に黒変し、組織に浅く潜り込んだ黒色菌核が認められ、発病部位から萎縮・乾固していく。
常法により病原菌分離を行ったところ、鱗茎の黒変部から高頻度で同一種と見なされる糸状菌が分離された。 分離菌を用いて接種試験を行ったところ、10℃4週間で鱗茎の黒変が再現され、接種菌が再分離された。 分離菌は、PDA培地上で初め灰白色でやがて暗緑色となる気中菌糸に富むフェルト状の菌叢となる。 培養が進むと1mm弱の黒いごま粒状の菌核を培地に浅く潜り込むように形成した。 生育適温は20℃で、25℃以上では生育抑制を受けた。 子のう盤や分生子の形成は認められなかった。 菌糸幅は3.3〜8.0μmで、菌糸の分枝点に Rhizoctonia 属菌の特徴は認められず、菌核の形態・生育適温から本菌は Sclerotium cepivorum と考えられた。 また、ゆりとねぎに病原性を示し、たまねぎ、にんにく、チューリップに有傷接種でのみ感染したことから、 Sclerotium cepivorumvar.tulipae Desmazièresと同定した。 本病は低温年を中心に近年多発傾向であった。 (十勝農試・十勝南部普及センター) |
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