北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成14年8月に森町のプルーン(品種:「サンプルーン」)果実に炭疽病に類似した症状が発生した。本症状は道南のプルーン産地では以前から発生していたようである。平成16年の調査から、森町のほか七飯町においても発生が確認され、発生程度は病果率1〜10%程度であった。
罹病果実には直径1.5〜2cm程度の褐色の円形のくぼみを形成し、病斑部はやや軟化し、乾燥すると表面にしわを生じた。くぼみの中央部はやや隆起し、オレンジ色の分生子粘塊を生じる場合もあった。 罹病果実から得られた4分離菌株のPDA平板(裏)の色は赤色または黒色を 呈し、菌糸の生育適温は25〜28℃であった。分離菌株の分生子懸濁液を健全 なプルーンの果実へ噴霧接種したところ、いずれの菌株も原病徴と同様の症状 が再現された。分離菌株の分生子はいずれも無色、単細胞で、 紡錘形〜楕円 形、両端が尖るか丸く、大きさは9.3〜18×3.8〜6.5μmであった。付着器は単褐 色〜灰黒色、厚膜の倒卵形〜楕円形で、大きさは7.5〜15.9×5〜12.5μmであっ た。さらに、ベノミルを1,250ppmの濃度で添加したPDA培地上で菌糸の生育を調 べた結果、供試した4菌株(赤色型2菌株、黒色型2菌株)はいずれも無添加のも のに比較して、20%以上の生育増を示した。 以上の諸性質から、本菌をColletotrichum acutatum Simmonds ex Simmonds と同定した。本菌は多犯性で、国内では18科22種以上の作物に炭疽病を起こすこ とが報告されている。北海道における発生の報告は少なく、今日までいちごの炭疽 病で報告されている。 (道南農試・渡島中部普及センター) |