北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成13年度新発生病害虫]
大豆の黒根腐病(新発生)
-
発生時期
- 平成13年8月上旬
- 発生場所
- 新篠津村の水田転換畑
- 被害の様相
- 大豆(品種「音更大袖」)の葉がしおれ、次第に枯死していく症状がみられた。発病株の地際部ならびに主根は褐変しており、容易に引き抜くことができた。
- 特徴
- 発病株を引き抜くと主根上部に赤色で直径が0.5mm程度の小粒(子のう殻)が多数付着していた。また、主根の表層あるいは側根を検鏡すると、組織内に褐色の微小菌核が多数観察された。褐変部位から定法により病原菌の分離を行ったところ、PDA培地上で初め白色、後に褐色を呈するコロニーを形成する糸状菌が高頻度で分離された。分離菌を土壌接種して大豆(「トヨムスメ」、「音更大袖」)を播種したところ、地際部、直根および側根に褐変が再現され、接種菌が再分離された。
分離菌は、主軸から樹枝状に分岐する分生子柄に無色、円筒形の3隔壁を有する分生胞子を多数形成した。分生胞子の大きさは50〜90μm(平均67.2μm)×5〜10μm(平均5.8μm)であった。また、分生子柄の主軸先端にはvesicleの形成が認められた。培地中には褐色の微小菌核が多数形成された。さらに1〜2ヶ月後には赤色で球形の子のう殻が形成された。子のう殻中には無色で両端が丸みをおびた紡錘形あるいは鎌形の子のう胞子が観察された。子のう胞子の大きさは30〜60μm(平均43.4μm)×4.0〜9.0μm(平均5.3μm)であった。これらのことから、本菌はCalonectria ilicicola Boedijn & Reitzma(不完全世代
Cylindrocladium crotalariae (Loos) Bell & Sobers)と同定された。
以上より、新篠津村で発生した大豆の立枯症状はCalonectria ilicicola によるダイズ黒根腐病と考えられた。
(中央農試・石狩北部普及センター)
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