北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成12年度新発生病害虫]

イネ科牧草のカラフトセセリ(新発生)


カラフトセセリ幼虫

発生時期
平成11年7月
発生場所
網走管内滝上町上札久留
被害の様相
食害する。
特徴
 日本未記録のカラフトセセリThymelicus lineola Ochsenheimer成虫が採集された。本種は欧米でイネ科牧草の害虫として知られているため平成12年6月上旬に発生地付近のほ場周辺で野生化したイネ科牧草を調査したところ、チモシー、ケンタッキーブルーグラス、オーチャードグラスに寄生食害している本種の中令幼虫が発見された。草種別ではチモシーに対する寄生密度が最も高く、ケンタッキーブルーグラス、オーチャードグラスへの寄生は比較的少なかった。これら幼虫は、おのおの発見された植物を与えて飼育したところ、いずれも成虫に至るまでの発育を完了した。なお、チモシーに寄生加害していた中令幼虫に秋まき小麦を与え続けたところ、これも発育を完了した。
 本種は欧州全域から樺太に至るアジア大陸に広く分布し、北米にも侵入個体群が定着、分布を広めつつある。年1化で7月〜8月頃に成虫が出現、食草の茎の根元に産卵した後、そのまま卵態で越冬して翌春5〜6月にかけて幼虫がイネ科植物の葉を食害する。幼虫は葉を縦方向に二つ折りにして数カ所を糸でつづり合わせた中に潜み、葉を葉縁から縦長にえぐり取るように食害する。幼虫の体色は淡緑色で頭部は緑白色、内側白色・外側褐色の縦条が一対ある。終令幼虫は体長約2.3cm程度、蛹は体長約2cmで、おそらく葉の上で蛹化するものと思われる。成虫は翅の開長2.5〜2.9cm程度の小型の蝶で、翅の上面は明るい橙褐色で後翅を主体にやや黒ずむ。翅の下面は淡褐色である。上述のような生活史から、夏季に数回刈り取られる牧草や、秋または春には種するムギ類に対して激しい被害を及ぼす可能性は高くはないものと推測される。
 なお、平成12年夏に明らかになった発生市町村は滝上町、興部町、紋別市、西興部村で、滝上町札久留を中心にしたおおむね半径16kmの圏内で発生が確認されている。

(北見農試)



新発生病害虫一覧へ戻る
ホームページへ戻る