北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[平成11年度新発生病害虫]
だいこんのタネバエ(新寄主)
タネバエ幼虫によるだいこんの根部被害は、道内では10年ほど前から認められていた。しかし、収穫時に加害幼虫などが得られることは少ないため、これまでに被害状況の報告、被害特定の方法が示されたことがなく、被害実態・多発条件などについては未解明のままであった。
これまで羽化成虫による同定は1件のみであるが、6月下旬から7月下旬に収穫期となった真狩村、恵庭市、北広島市、新得町のだいこん根部への食入幼虫または蛹の前気門数によってタネバエと推定されている。
これらの食害状況をもとに、本年の大野町での発生実態とあわせて、タネバエの食害の特徴を以下のように整理した。
タネバエの食害の特徴
- 根の表面に対して、ほぼ直角に内部に食入する。食入前に表皮を溝状に食害することもある。
- 1本あたりの食痕数は1〜5個が一般的で、多くとも10個以下である。
- 内部は不規則な形で、一定の太さの坑道とはならず、食入口より広くなっている場合が多い。坑道内面は粗造となっていて、さまざまの程度に褐変している。
- 食入(脱出?)口の太さは新しいもので径1〜2mm、古いものでは根の肥大にともなって3〜5mm、あるいはそれ以上となる。食入の深さは中心部に向かって5〜10mm程度であるが、上下方向に屈曲する坑道も少なくない。
- 食入位置は地際部から0〜5cm深のことが多いが、ダイコンの生育ステージなどにより葉柄基部から20cm深までのさまざまの位置に食痕ができる。
- 食害されるだいこんの生育時期は一定していないが、生育中期から後期の被害が少なくない。
- 土中で蛹化することが一般的で、終齢幼虫の太さは2mmほどであることから、脱出口は最大2mmと考えられる。食痕はだいこんの直径に比例して拡大するので、観察時の数値から逆算すれば、食害脱出時のだいこんの直径が推定できる。さらに、だいこんの肥大曲線が判っていればおおよその加害時期も特定できよう。
他害虫による食痕
- ネキリムシ類
- 新食痕で、径6〜18mmほどと大きく円い。食入深も6〜20mmほど、ときには貫通するが、食痕最深部は皿形。1本あたり数個が地際から5〜20cm深ほどまでに散在。浅い食痕では、マルガタゴミムシによる食害との判別がむずかしい。
- マルガタゴミムシ
- 収穫期には、径3〜12mmの円柱から円錐状の食痕となる。食入深は浅く、20mmをこえるのは稀。数個が地際部から15cm以内に散在。
- ダイコンバエ
- 表皮から肉質部に至る深い溝が、だいこんの長軸方向に沿ってできる。多数の幼虫による集団的被害となることが多い。
- キスジトビハムシ
- 食痕は小さく、浅い皿形のほか、一定の太さの溝・坑道となる。径あるいは幅は1mm程度(根の肥大により収穫期には3mm強までに拡張)で、食痕数は多く、部分的あるいは全体的に集団化する。
(道南農試・北見農試)
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