北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成9年8月、上川支庁管内名寄市のセイヨウスモモ(品種不明)で、鱗翅目幼虫が幼果に食入する被害が発生しました。被害果を室内で静置すると、幼虫は食入部より糞塊を排出しながら発育を続けました。羽化成虫から、本種はスモモヒメシンクイガ(Grapholita dimorpha Komai)と同定されました(十勝農試 鳥倉英徳氏同定)。本種は本州中部高地、および東北地方においてすもも(セイヨウスモモ、ニホンスモモ)、ボケ、クサボケの果実内部を食害すること、特にヨーロッパスモモ(プルーン)では著しい被害の事例が報告されています。本道のすももでも、果実の被害が従来から知られていますが、ナシヒメシンクイガ(G. molesta (Busck))単独によるものとされてきました。本種の成虫はナシヒメシンクイガと非常によく似ていますが、後翅後端が突出すること、雌の生殖器の内部形態に明瞭な違いがあることで判別できます。生態もナシヒメシンクイガと同様に、年2〜3化で幼虫越冬と思われますが、新梢を加害しないことや、まゆを加害果実の外面に作るなどの違いがあります。