北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
十勝管内の幕別町において、良好に生育していたながいもを平成9年11月下旬に収穫・貯蔵し、12月下旬に出荷のため洗果したところ、褐色の斑点が全長にわたって不規則に分布している個体が多数認められました。このため、4.3haの収穫個体のうち約3割は等級低下となりました。表皮の斑点は淡褐色で表層に限られますが、側根基部のものは輪状暗褐色でやや深くなります。斑点は円形で、大きさは0.5〜3.0mmとばらつきます。表皮斑点の23個を染色調査したところ、そのうちの47%にネグサレセンチュウ類の成幼虫を、29%に卵を確認できました。また、発症した貯蔵ながいもの遊離土からは、生土25g中に180頭前後と多数のキタネグサレセンチュウPratylenchus penetrans(Cobb)Filipjev et Schuurmans Stekhovenの成幼虫が分離されました(山田英一氏調査)。このように遊離土で線虫密度が高いのは、被害組織から脱落したためと推定されます。12月中旬に当該圃場から採取した土壌からは、20〜40頭のネグサレセンチュウ類が分離されました。
この圃場の5年間の作付経歴は、小麦連作−てんさい−飼料用とうもろこし連作と、イネ科作物に偏っていました。また、これに類似した症状は、平成9年に芽室町で、やはり小麦連作あとのながいもで観察されています。
ネグサレセンチュウ類によるながいもの類似被害は、青森県からイネ科作物後作での多発が報告されていますが(及川ら、1991)、北海道からは初めての確認事例です。