北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成6年および平成8年、中標津町のだいこんにバーティシリウム黒点病に酷似した症状が発生しました。だいこんの葉や根には外観的に異常を認められず、肥大根を横断すると皮層下の部分が輪状に黒変しており、V.dahliaeによるバーティシリウム黒点病と識別できませんでした。
罹病組織からV.dahliaeとは異なるVerticillium属菌が高率に分離されました。本菌の分生子をだいこん苗に浸根接種すると原病徴が再現され、接種菌と同一の糸状菌が再分離されました。本菌のPDA培地上での生育適温は20〜23℃で、30℃ではほとんど生育しません。暗色休眠菌糸を形成し、微小菌核や厚膜胞子を形成しません。分生子は単胞で車軸状に分枝した分生子柄の先端に擬頭状に形成され、大きさは3.5〜6.8×2.3〜4.1μmです。また、分生子柄の基部細胞は黒色に着色します。これらの特徴からV.albo-atrumと同定されました。接種試験によりだいこんが本菌の寄主になり得るとの報告はありますが、ほ場での自然発病の確認は初めてであり、本菌をバ−ティシリウム黒点病の病原に追加します。