北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成9年度新発生病害虫]

にんじんのFusarium avenaceum による乾腐病(病原の追加)


亀裂・黒褐色の大型病変  平成8年および平成9年6〜7月、函館市で栽培されたにんじん「向陽二号」の根部に乾腐症が多発しました。本症状ははじめ地表下数cmの主根の皮目が淡褐色・やや陥没・十字の亀裂を生じ、次第に黒褐色・横長の乾いた大型病斑となり、重症個体では根部がくびれて枯死します。発病株からはFusarium属菌が高頻度に分離されました。本菌はにんじんに病原性を有し、PDA培地では白〜淡黄色で綿毛状の気中菌糸を形成し、培地の色調は濃い赤色〜赤褐色でした。CLA培地ではオレンジ色のスポロドキアが多数形成され、枝分かれした分生子柄に1個の大型分生子が形成されました(モノフィアライド)。大型分生子は細胞壁が薄く、針状、3〜7隔膜(通常5)、47.1〜86.5×3.1〜4.8μm(平均70.6×3.9μm)、基脚細胞の基部は通常V字(まれに足型)であった。小型分生子と厚膜胞子の形成は認められなかった。以上から本菌はF.avenaceum (Fr.) Sacc.と同定されました。本菌による病徴はF.solani による乾腐病との区別が難しいので、本菌を乾腐病の病原に加えました。なお、本菌による乾腐病は函館市のほか道内各地のにんじん栽培地でも発生しています。



症状写真

重症個体

(道南農試・ホクレン農総研・北見農試・渡島中部地区農改センター)



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