北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
十勝管内では、古くから小豆に生育不良を伴う根部の褐変症状が発生する圃場が認められていました。その症状は開花期以降に顕著に現れます。最初主根が褐変し、組織の木質化が認められ、側根の伸長も著しく抑制されます。その後に主根が脱落することが多く、収穫時には容易に引き抜けます。地上部は着莢後に葉が黄化し、成熟期が早まります。被害解析の一例として、被害の大きいほ場では着莢数が2割程度少ない傾向を認められました。 平成9年8月、浦幌町で発病個体を採集し、常法に従い病原菌の分離を行った結果、Fusarium属菌が高率に検出されました。分離菌は三日月型の大型分生胞子と小型分生胞子を生じました。小型分生胞子は、0隔膜、無色で、楕円形・長楕円形または卵形で、菌糸から分岐した長い分生子梗の先端に擬頭状に形成され、その大きさは5〜12×2.5〜3.3μmでした。大型分生胞子は3隔膜胞子が最も多く、大きさは42.5〜57.5×4.5〜5.8μmで、胞子の幅の平均は5.4μmでした。これらの形態的特徴から、本菌はFusarium solani(Mart.)App.et Wr. emend.Snyd.et Hans.と同定されました。そのcultivarは大型分生胞子の隔膜数・幅、小型分生胞子を容易に生ずることからγタイプと考えられます。 分離菌を殺菌土壌を充填したポットに接種し、小豆に対する病原性を検定したところ、自然発病と同様の症状が再現されました。本病は新病害と考えられることから、小豆の根腐病(仮称)と呼称します。 今後は菜豆の根腐病菌との異同および寄主範囲に対する検討が必要です。なお、本症状は平成8年に帯広市、平成9年に幕別町,芽室町でも発生が認められました。 |
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症状写真(左:健全株,右:発病株) 根の褐変症状 |