北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
1996年、浦臼町のカーネーション栽培ハウスにおいてハモグリバエによる被害が多発した。被害株は下位から上位におよぶ葉と、激しい場合には茎にも食入被害を受け、上位8葉の被害葉率が96%におよぶハウスもあった。成虫および幼虫を調査した結果、加害種は国内では未記録のカーネーションハモグリバエ(仮称)Liriomyza dianthicola (Venturi)であると同定された。
幼虫は体長2〜3mm程度の白色から黄白色のウジで、葉にもぐり不規則な線状の潜り痕を残す。蛹化は地中で行われ、蛹(囲蛹)は大きさ2mm、色は褐色である。成虫は体長2mm程度の小型のハエで、色は黄色で胸および腹部背面は黒である。成虫、幼虫および加害様相のいずれも同属のナスハモグリバエに似るが、本種はカーネーション(Dianthus属)だけを寄主植物とするのに対し、ナスハモグリバエは広い寄主範囲を持つ一方でカーネーションに加害することはほとんどない。
病害虫防除所では10月11日に特殊報第3号を発表し生産地への注意をうながした。本種の生態についての報告は少なく不明な点が多いが、イタリアでは4月から10月にかけて少なくとも7世代を経過するという。現在、発生地で粘着トラップによるモニタリングを進めているが、今後の動向によっては越冬方法などの生態解明および防除対策が必要と考えられる。