北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
数年前から北海道の一部地域でにんじん根部に、亀裂をともなった褐色水浸状の病斑を生ずる病害が発生し問題となっている。1995年と1996年には、上川地方および渡島地方の計5市町で発生を確認し、そのうち上川地方では7月から10月の収穫期を通じて発生していた。また、出荷後に病斑が進展拡大するため市場病害としても重要である。病斑部には卵胞子が観察され、常法によりPythium属菌が高率に分離された。分離菌を含菌寒天片によりにんじんの根に接種すると病徴を再現した。蔵卵器は表面平滑、直径10〜24μm(平均16μm)、頂生または間生し、未充満で直径7〜24μmの卵胞子をもつ。蔵精器はかぎ型やこん棒状で、しばしば表面にしわがある。最適生育温度は25℃で、ジャガイモ・ニンジン寒天培地上での生長は7.8mm/日と遅い。以上により本菌はPythium sulcatum Pratt et Mitchellと同定され、本病は北海道ではこれまで未報告だったニンジンしみ腐病と判明した。