北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成8年度新発生病害虫]

ピーマンの黄化えそ病(新発生)


 1996年6月東川町において、ピーマンが生長点から枯死する病害が発生した。その症状は生長点付近の展開まもない葉が枯死し、展開葉では不鮮明な黄色輪紋やえそ斑点がみられ、先端近くの茎には褐色〜黒色のえそが認められた。発生はハウス1棟のみであったが発生株率は20%となった。発病株からは外膜を持つ大型の球形ウイルス粒子が観察された。ピーマンに汁液接種した結果、病徴が再現され果実にえそを生じた。5科16種の植物で感染が認められ、TSWV(O系)抗体(茨城県農総センター、津田氏より分譲)によるエライザ法で反応が認められた。以上のことから、本ウイルスをトマト黄化えそウイルス(TSWV)と同定した。TSWVの寄主範囲は極めて広く、10科36種が知られている。主な寄主植物はトマト、ピーマン、タバコ、ダリアなどで、アザミウマ類によって媒介される。近年、キクでTSWVとミカンキイロアザミウマによる被害が報告されている。種子伝染、土壌伝染はせず汁液伝染性も比較的弱い。8種類のアザミウマで媒介が確認されており永続伝搬するが経卵伝染はしない。幼虫時にのみTSWVを獲得し成虫での吸汁加害でウイルスを伝搬する。越冬伝染源にはノゲシ、オニタビラコがある。発生した場合の被害は大きく、今後の侵入及び拡大には注意する必要がある。

(上川農試、花野菜センター)



葉の黄化症状 茎のえそ症状 果実のえそ症状 TSVWの電子顕微鏡写真

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