北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
1996年10月、函館市から石川県及び富山県に出荷されたジャガイモ塊茎に鱗翅目幼虫による甚だしい被害が認められ、出荷物の約30%が廃棄処分となった。幼虫は塊茎内をトンネル状に縦横に食害しており、その甚だしい食害状況から本種はジャガイモガと推測され、羽化成虫による同定でもジャガイモガPhthorimaea operculella Zellerと確認された(北大、坂巻祥孝氏同定)。
ジャガイモガはキバガ科に属し、幼虫がジャガイモ、ナス、トマト、タバコの葉に潜って食害し、ナス科作物の大害虫として世界的に有名であり、とくにジャガイモ塊茎での被害が甚だしいことから、かつてはペスト、コレラに例えられたほど恐れられた検疫対象害虫であった。しかし、1953年に広島県のタバコで発生が確認され、このため植物防疫法に基づく緊急防除が1954年から1965年まで実施された。この間、発生及び警戒地域の指定や寄主作物の移動規制、薬剤散布や被害株の抜き取り、収穫後の茎葉や堀残し塊茎の処分など徹底した対策が行われたが根絶には至らず、現在では福島以南で発生している。
函館地区農業改良普及センター及びJA函館による推定発生地域での聞き取り及び寄主植物での発生確認調査では発生圃場の特定には至らなかった。また、本種成虫は走光性はなく、その飛翔行動から長距離分散型の害虫ではないとされており、現在のところ侵入経路及び発生状況については不明である。
本種は休眠性をもたないことから露地での越冬は困難であるが、倉庫内などの貯蔵イモで越年することは可能と考えられ、翌春越年個体が露地の寄主植物に寄生して周年発生する可能性も考えられることから、今後厳重な警戒が必要である。