北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成7年8月、北海道北村のカーネーション(品種「プリンセスダイアナ」)で花弁が水浸状に腐敗する症状が発生した。発病は開花初期から起こり、中央部の花弁が褐変し、その展開が停止する。発病花の内部では花柱および花糸も褐色で水浸状に腐敗している。蕚での発病はまれで、表面に円形の褐色病斑が形成されることがある。罹病部からFusarium菌が分離され、これらをカーネーション(品種「プリンセスダイアナ」)に接種したところ、同様の症状が再現された。PDA培地における培養子座の着色は無色〜カーマイン赤色で綿毛状の気中菌糸を豊富に形成する。また、本病菌はカーネーション・リーフ寒天培地上で豊富に小型分生子を形成する。小型分生子はレモン型〜西洋ナシ型で特徴的なとっくり型のモノフィアライドから形成される。その大きさは5.4〜12.9×3.7〜9.2μmである。大型分生子の形成もまれであるが認められる(隔膜数は3〜4)。以上のことから病原菌はFusarium poaeと同定された。本病は北海道で通称「花腐れ」と呼ばれている症状で、以前から発生していたものと考えられる。また、本病の伝染は空気伝染に加え、虫媒伝染が報告されていることから媒介者の解明も検討する必要がある。