平成6年9月、北海道長沼町でキク(品種「アルプス」)の花蕾が紅色のかびを伴って腐敗する症状が発生した。発病した花蕾は花弁の展開が不良となったり、 未展開のまま腐敗する。 罹病部からFusarium菌が分離され、これらの単胞分離した菌株をキク(品種:「清姫」)の花蕾に接種したところ、同様の症状が再現された。本病菌はPDA培地上で白〜淡黄色・綿毛状の気中菌糸を形成し、培地の色調は濃い赤色あるいは褐色である。カーネーション・リーフ寒天培地上でオレンジ色のスポロドキアを豊富に形成する。大型分生子はスポロドキア内の分岐した分生子柄上のモノフィアライドから形成される。大型分生子の形態は細長く針状で、細胞壁は薄く、基脚細胞の基部は通常V字(notched)となるが、足形(foot-shape)を示すこともある。大きさは32.4〜83.2×3.6〜5.6μmで3〜8(大多数が5〜6)の隔膜を持つ。厚膜胞子の形成は認められない。以上のことから病原菌はFusarium avenaceum と同定された。病名は赤かび病を提案したい。発生圃場では前作のトルコギキョウに茎腐病(Fusarium avenaceum )の多発が見られたことから、本病菌が残存し、キクで発病したものと考えられる。