北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[平成6年度新発生病害虫]

 アルストロメリア、デルフィニウム、ニゲラ、およびポインセチアの灰色かび病(新称)およびアスター、バラの灰色かび病(新発生)


 平成4年〜平成6年に花き類の灰色かび病を調査し、各種品目で発生が認められた。発生はアルストロメリア(滝川市、長沼町)、デルフィニウム(美唄市、当別町、三石町、月形町)、ニゲラ(月形町)、アスター(長沼町)、バラ(栗山町)およびポインセチア(月形町)などで認められた。病原菌を分離したところ、各花き類から同一の糸状菌が分離された。分離菌株は灰白色で気中菌糸の旺盛な菌叢を呈し、生育速度も早いことからBotrytis菌と考えられた。分離源の花きに接種したところ、いずれの菌株も病原性が認められた。また、インゲンマメおよびイチゴの切離葉に対しても病原性が認められ、分離菌株は多犯性であった。各分離菌株はPDA培地上で黒色で不正形の菌核(5mm程度)、Holdfasts、分生子、小型分生子、を形成した。分生子の大きさは菌株によって異なるが、大きさの平均はアスター株でl0.7×7.4μm(長径×短径)からポインセチア株l5.7×9.9μm(長径×短径)であった。また、分生子表面の微細構造はいずれの菌株もいぼ状であった。
 以上のことから、本病菌は多犯性の病原菌で、大型分生子の大きさおよびその表面構造から、Botrytis cinerea Persoon:Friesと同定した。
 アルストロメリア、デルフィニウム、ニゲラおよびポインセチアでは本病の報告がないことから、灰色かび病(新称)としたい。また、北海道におけるアスター、バラの灰色かび病の発生を確認した。各品目において発病部位が異なるため、以下に病徴の概略を示す。
 アルストロメリア:地際部の茎や葉、花弁に発生する。地際部の茎では淡褐色に変色した不正形の病斑が生じ、これが茎に沿って紡錘形の病斑に拡大する。やがて病斑の周縁部は褐色、中心部は灰褐色の病斑となる。葉では葉先から褐色に枯れ上がり、病斑部にやがて灰色のかびが生じる。花弁では褐色の小斑点が生じたり、花弁の一部に淡褐色で不正形の病斑が生じる。
 デルフィニウム(ヒエンソウ):花弁および花茎に発生する。花弁では淡褐色で不正形の病斑が現れる。花茎では褐色で不正形の病斑が現れ、やがて黒褐色の病斑となる。発病茎は病斑部から細くなり、上部は枯れ上がる。病斑部にはやがて灰色のかびを生ずる。
 デルフィニウム(チドリソウ):花房や葉、地際部の茎に発生する。花房および葉では淡褐色で水浸状の病斑が生じ、表面はやがて気中菌糸に覆われ、灰色のかびが生ずる。また、生育後期になると地際部の茎に長楕円形の病斑が形成され、下葉から枯れ上がる。
 ニゲラ:葉に発病することが多い。はじめ葉の先端部が淡褐色となりやがて葉全体に進展する。病斑部にはやがて灰色のかびが生ずる。
 アスター:葉、茎などに発生する。葉では葉縁部から淡褐色の病斑が拡大し、褐色、不正形の病斑となる。葉縁および葉裏に灰色のかびが生じる。茎では褐色の病斑が茎全体に進展し、病斑部から上部が枯れ上がる。
 バラ:枝、花蕾および花弁に発生する。花蕾ではガク片などから発病し、褐色の病斑が形成される。これらが未展開の花弁に進展し、花蕾全体が褐色となる。激しい場合には、枝まで病斑が進展する。また、展開した花弁では淡褐色の小斑点が多数生じる症状か見られる。
 ポインセチア:茎および葉に発生が見られる。茎では地際部に黒褐色の病斑が形成され、やがて表面に灰色のかびが多数生じる。病斑部から上部は萎ちょうし、全体が枯れ上がることが多い。葉では葉縁部から不正形で褐色の病斑が形成される。

(病害虫防除所)



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