北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成2年ころから、後志支庁管内余市町のハウス栽培トマトおよびミニトマトの維管束が褐変し、下位葉から黄化・萎ちょうする萎ちょう病類似症が発生した。同様な症状は当地の7農家で発生しているが、これらの農家で栽培している品種はいずれもトマト萎ちょう病菌レースJ1に抵抗性を有するものであった。そこで道内では新規のレースの発生が懸念されたことから、その病因について検討した。
褐変した維管束から高率にFusarium菌が分離され、それらは小型および大型分生胞子の形態的特徴からF.oxysporum と同定された。また、分離菌をトマト「ポンテローザ」、ナス、ピーマン、ダイコン、キュウリ、スイカ、メロン、小豆、大豆に浸根接種するとトマトにのみ強い病原性を認めたことから、分離菌は F.oxysporum f.sp.lycopersici と考えられた。そこで、トマト萎ちょう病菌レースJ1、J2および根腐萎ちょう病菌(レースJ3)に対する抵抗性遺伝子を単独あるいは複合して所有する栽培品種と台木品種に分離菌を浸根接種した。その結果、分離菌は萎ちょう病菌に対する抵抗性遺伝子を持たない「ポンテローザ」およびレースJ1に抵抗性の「興津3号」と「桃太郎」を侵したが、レースJ2、J3に抵抗性を有する栽培品種と台木品種を侵さなかった。このことから今回発生したトマトの萎ちょう性病害は、道内では初確認のF.oxysporum f.sp.lycopersici レースJ2によるトマト萎ちょう病であると考えられる。