北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成3年7月、恵庭市の食用ユリ(品種:白銀)に原因不明の葉枯れ症状が発生した。発病株は茎に褐色の条状のえそを生じ、葉の先端部から枯死が始まり、遂には株全体が枯死した。多くのものば頂葉に灰白色の条状のえそとモザイク病徴を併発した。罹病株から病原ウイルスの検出を行った結果、ほとんどの株からチューリップモザイクウイルス(TBV)及び未同定のひも状ウイルスが検出された。
これらのウイルスを健全食用ユリに汁液接種したところ、それぞれ単独接種でば葉枯れ症を生じなかったのに対して、混合接種した場合にだけ葉枯れ症が再現された。また、発病株から採取したりん茎を鉢植えした結果、葉枯れ症が再現し、りん茎を通じて伝染することも確認された。以上のことから葉枯れ症はTBVと未同定のひも状ウイルスの重複感染によって起こることが明らかとなった。
また、未同定ひも状ウイルスは粒子の長さ470〜500mmで、ユリのほか、Chenopodium amaranticolor
、C. quinoa、C. murale 、ホウレンソウ、フダンソウ、レタス、シュンギク、センニチコウ、及びツルナに感染した。また、オランダのBulbsearch Center のDr.Asjes から分譲されたLilyvirus x抗血清とエライザ法により反応が認められた。これらの諸性質から本ウイルスはLilyvirus x に近いものと考えられる。本ウイルス及び本病害はわが国では未報告であり、病名を含めさらに検討したい。
新発生病害虫一覧へ戻る
ホームページへ戻る