北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成4年9月29日、旭川市西神楽町の水田で株全体が萎縮する症状が認められた。収穫直前であったため茎葉部の病徴は明瞭でなかったが、稈基部には脈に沿って盛り上がった白色及び黒褐色の条線が認められたことから、本病の可能性が示唆された(農環研鳥山室長の所見による)。その後、北海道大学農学部におけるエライザ検定により、イネ黒条萎縮病 Rice black-streaked dwarf virus(RBSDV)と同定された。
本病の病徴は、発病初期に生育がやや遅れる程度で見分けが難しいとされている。分けつ最盛期になると株全体が萎縮し、葉身裏面、葉鞘及び稈の葉脈はわずかに隆起してロウ白色・灰色・黒褐色の短い条線を生じる。稈では水腫状になり、葉身基部の葉脈が曲がってしわを生じる。穂は出すくみ、稔実不良となるとされている(新海:1988)。
本ウイルスは25種のイネ科植物に寄生性を示し、主な寄主作物はイネ、麦類、トウモロコシなどで、主にヒメトビウンカによって媒介される。ヒメトビウンカはほとんどの個体がウイルスと親和性を持つが、経卵伝染はしない。若齢幼虫ほどウイルスを獲得しやすいとされ、1〜3週間の虫体内潜伏期間を経て、永続的に媒介する。水稲は分けつ最盛期までは感受性であるとされていることから、水稲では現行のヒメトビウンカ防除対策で対応が可能と推察される。
なお本ウイルスはトウモロコシや麦類などにも著しい被害を与えることから、今後畑作物における発生動向に注意を要する(新海:1962、1988、大畑:1989)。
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