北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
平成3年5〜7月、伊達市のハウス促成栽培のトマト品種「マルチファ−スト」で樹勢が弱くなり、上位葉がしおれる症状が発生した。発病株の地上部は黄化や激しい萎ちょう症状を伴うことはなく、維管束の褐変も認められない。一方、発病株の根は褐色に腐敗し、細根や支根の一部は脱落し、太い支根や直根のみとなる。褐変した根の表面には多数の亀裂を生じ、コルク化し松の根のような外観を呈する。ひどくなると褐変腐敗は地際部の茎にまで及ぶ。罹病根からは高頻度でPyrenochaeta 属菌が分離された。
本菌の25℃、1カ月間培養したふすま培地を土壌に混和後トマトを移植し、2カ月間栽培したところ、根や地際の茎に同様のコルク化を伴った褐変腐敗を生じ、病原性が確認できた。また、比較のためタマネギなどから分離したP.terrestris を同様に調査したところ、トマトの根には紅色の腐敗を生じ、明かに本菌の病徴とは異なったことから、本病はP. terrestris によるトマト紅色根腐病とは異なるものと思われる。
本菌はPDA上で灰黒色の菌叢を呈し、豊富に気中菌糸を形成するが生育は比較的遅い。現在まで、分類の指標となる柄子殻の形成が認められず菌の同定は不可能であるが、非常に特徴的な根の病徴や菌叢の特徴から、静岡県などで報告のあるP. lycop-ersici Schneider et Gerlachによるトマト褐色根腐病の可能性が高い。
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