北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[昭和52年度新発生病害虫]

ばれいしょの乾腐病

(1977年−昭和52年)


 本病は Fusarium solani f. sp. eumartii による病害であることを昭和49年度に報告した。その後本菌を塊茎に有傷接種して15〜25℃の温室で2カ月間ポット栽培した結果、茎葉は矮化萎縮し、下葉は黄変枯死し、茎基部の内部組織は褐変する。
 一方、昭和50年に長崎県愛野町産の送付罹病塊茎表面の病徴はいくぶん異なり、ストロン部位の塊茎末端から輪紋状に、または線虫による小さなこぶ状の部位から乾腐症状を呈した。本菌の大型分生胞子93%が3隔膜を有し、大きさ29.0×6.0μmで、MATUD・SNYDER (1973)の方式に従えば F. solani f. sp. radicicola に相当し、病原性が認められた。
 なお、f. sp. eumartii 及び f. sp. radicicola の感染温度(スライス接種法により「男爵薯」及び「ワセシロ」を供試)はそれぞれ15〜20℃、25〜30℃で、両菌の生育温度と一致した。両分化型をそれぞれ15、25℃下でスライス接種し、15品種の感受性を検討した結果、「農林1号」は抵抗性、「メークイン」及び「ワセシロ」は感受性であった。
 さらに、これらとは別に昭和50年産の網走、上川、石狩及び根室地方の乾腐症状の塊茎から、F.raseum が分離された。本菌は塊茎接種で有傷部にのみ病徴を現わすが、拡大はせず、その感染適温は20〜25°Cであった。
 以上のように、本病は Fusarium solani の2分化型と F. roseum によって生ずることが明らかとなり、今後発生拡大の恐れもあるので注意を要する。


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