北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
いちごの芽えそ病は接木とナミハダニによって伝染されるウイルス性病害であると考えられていたが、本年度の試験によりシクラメンホコリダニ
Tarsonemus pallidus BANKS の寄生によって生ずることが明かとなった。
本種については伊戸、江原、野村の報告がある。雌は紡錘形で白色、前胴体部の2対の背毛中後方のものははなはだ長く、後体部背面の6対の背毛は比較的短く、第4脚はほとんど真直で非常に細く、末端に顕著な2毛があり、体長275μ内外。雄は胴部ほぼ卵形、前胴体部の4対の背毛の中第3対が最も長く、第4脚は内方にわん曲して太く、その節と節は融合し、5本の毛があり、末端近くに長大な毛があってむち状を呈し、さらに末端に大きな爪があり、体長220μ内外。
本種はシクラメンの葉、つぼみ、球根に寄生し、暗所を好む。葉は巻き、つぼみは開かず枯れる。野外のマオに寄生している場合では地表近くのわき芽の中で越冬し、4月に産卵する。両性生殖のほか単為生殖も行い、未受精卵からは雌が発育する。シクラメン上では27゚Cで卵期間2〜4日、幼虫期間1〜3日、静止期間1〜2日、卵から成虫まで7〜9日で、雌は成虫化後2〜3日で産卵を始め、1粒づつ産下する。なお天敵としてミヤコカブリダニ、ケブトカブリダニが知られている。
また本種の寄生植物として、キク、ガーベラ、セントポーリア、ベコニア、ゼラニュウム、キンギョソウ、フクシャ、コスモス、ワスレナグサ、ペチュニア、ダリア、トウガラシ、アカザ、その他種々のものが記載されているが、我国では本州で野外のマオに発生した記録がある。
なお、海外ではいちごに寄生して芽えそ症状を呈することがすでに報告されているが、日本でのいちごにおける発生の確認は今回が最初である。