北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[昭和53年度新発生病害虫]

水稲の斑点病(新称)

(1978年−昭和53年)


 本年7月中旬以降、特に8月上、中旬に葉及び穂が黒褐色となる現象が空知管内を中心に発生した。その後の調査により空知20、上川8、桧山及び胆振各1市町村に発生が及んでおり、そのほとんどは転作小麦、特に春播小麦の風下で発生がみられ、麦畑に隣接するほど黒褐変症が著しく、その玄米は茶米や青米が多く、米質が劣り、減収した。
 病徴は、葉身では葉脈に沿って微細な黒褐色短線状の斑点が生じ、穂では内外頴に0.2〜0.3mm大の黒褐色斑点を生ずる。葉しょう、枝梗、穂首にも黒褐色の短線状斑が僅かに認められる。発生の著しい株では、葉及び穂の全面が黒褐色にみえる。
 病理学的所見の結果、既存の小麦斑点病菌と同種である Helminthosporium sativum PAMMEL、KING et BAKKE=Bipolaris sorokiniana (SACC.in Soyok.)SHOEM. と同定され、斑点病と命名された。
 本菌は水稲よりも小麦に病原性が強く、15〜20゚Cでの発病は軽微であるが、28゚Cでは菌の増殖及び発病に最適し、潜伏期間が短い。本菌は水稲の葉、籾、ミゴ、小麦及びえん麦のほか、発生田近傍の畦畔のイネ科植物からも分離された。
 なお、本菌の分生枝梗は不規則に屈曲し、長さ 220μ。分生胞子は20×73μで暗オリーブ褐色、やや細く僅かに湾曲した紡錘形または楕円状球形で、2〜11個の隔膜を有する。分生胞子は両端から発芽する。
 なお本年多発生した原因は不詳であるが、暑夏傾向及び転作小麦の作付増加などが一因と考えられる。生態及び対策につき試験を開始したが、今後継続発生が推察されるので注意を要する。


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