北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構


[昭和52年度新発生病害虫]

りんごの根腐疫病(仮称)

(1977年−昭和52年)


 昭和52年6月に、余市町及び仁木町の矮性台木(MM 106)に接木した「スターキングデリシャス」苗に、collar rot症状が認められた。なお、同症状は滝川市でも認められた。
 病徴は、罹病樹木の葉が退緑して上巻きし、枝の伸長が不良で、地際部の幹及び根は皮層から木部まで褐変腐敗する。これらの幹、根及び附近の土壌から Phytophthora 属菌が高率に検出され、分離菌は有傷接種でりんごの幼果、葉、枝、幼木の幹及び根に病斑を形成し、そのいずれからも再分離が可能であった。
 分離菌の菌糸は強靭、膨みなく、厚膜胞子を欠き、遊走子のう柄は中空の遊走子内から生ずるか simple monochasial sympodium で遊走子のうは乳状突起を欠き、卵形〜楕円形、先端は平らかで僅かにくぼみ、中央に空胞なく、平均46×25μm (A 84菌)または25×20μm(A 27菌)である。P.nicotianae var. parasitica あるいは P.palmivora の mating type A2 と対恃したとき多数の有性器官を形成し、蔵卵器は平均径 26μm、表面に小突起を生ずるかあるいは平滑で、蔵精器は底着、1または2細胞、卵胞子はほぼ充満で平均径 21μm、培養菌叢は綿毛状、均一、生育最低温度は3゚C以下、最適温度は24〜25゚C、最高温度は32゚Cである。
 以上のことから、病原菌は Phytophtora cambivora と同定され、根腐疫病と命名したい。なお、土壌からは上記のほか P.cactorum も検出され、有傷接種でりんごの各部位に病原性を示し、再分離された。したがって、両菌の精査をはじめ生態につき検討を要するが、今後矮性台木の普及により発生拡大の恐れもあるので注意を要する。


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