平成14年度 病害虫発生予察情報第5号
6月予報
平成14年5月22日 北海道病害虫防除所
(連絡先:Tel.0123(89)2080) |
A.水稲
B.小麦
C.豆類
D.ばれいしょ
E.てんさい
F.りんご
G.たまねぎ
H.あぶらな科野菜
I.果菜類
季節予報(付記)によれば、6月は前半ぐずつく時期があり、後半は天気は周期的に変わる、気温は平年並、と見込まれています。
このようなことから多めの発生が予想される病害虫は、小麦の赤かび病、豆類・ばれいしょのジャガイモヒゲナガアブラムシ、りんごの腐らん病・キンモンホソガです。
ヒメトビウンカ 発生期:既発(早) 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 前年の発生は日高・桧山支庁管内で多かったが他の地域では少なく、被害面積は全道的に小さかった。
- 4月〜5月が高温経過だったことから、第1回成虫の発生は早まっているが、発生量はかならずしも多くはないことから、6月の発生量も平年並と見込まれる。
- 上川中央部の越冬幼虫の保毒虫率は前年並だったものの、前年、縞葉枯病が多発した地域では注意が必要である。
- 防除対策
-
縞葉枯病の発生地域では、畦畔防除・育苗箱施用・水面施用・本田茎葉散布を組み合わせた総合的な防除が基本である。
-
水面施用は必ず水を止めて行い、極端な深水は避け、施用後4〜5日間止め水にして水の流出を防ぐ。
イネミズゾウムシ 発生期:やや早 発生量:やや少
- 発生経過と予報の根拠
-
前年の発生はやや少なめで、被害も少なかった。定点ほにおける昨年秋の新成虫の発生は大野町では平年並だったが、比布町では少なかった。
-
越冬成虫は5月の下旬頃より活動を始め、移植と同時に水田に侵入し、葉を食害する。
-
これまでの気象経過から、越冬成虫の活動は早まっている可能性がある。6月の気温は平年並と予報されていることから、水田への侵入期はやや早いものの、発生量はやや少ないと予想される。
- 防除対策
- 越冬成虫の発生盛期にあたる6月上・中旬の株当たり寄生数0.5頭、または成虫食害株率70%(50株調査)を防除要否の目安とする。
- 越冬成虫の発生盛期は、4月1日からの積算温量(13.8℃を上回る分の積算値70〜100日度)で予測が可能である。
- 本田防除(水面施用・茎葉散布)は成虫の発生盛期とその10日後の2回実施すると効果的である。
イネドロオイムシ 発生期:やや早 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 前年の発生は日高支庁管内で多めとなったが、全道的には平年並で、被害面積も小さかった。
- 年1回の発生で、越冬成虫が移植後の水田に移動して卵塊を葉の表面に産み付ける。
- これまでの高温経過から、発生期はやや早まるものと思われる。
- 6月の気温・降水量は平年並と予報されていることから、幼虫の加害が長びくことはないものと予想される。
- 防除対策
- 株あたり平均卵塊数2個が防除要否のめやすである。株当たり1卵塊程度では減収しない。
- 調査は専用の調査シート「北の虫見番」を使って行うと分かりやすい。1箇所につき結論がでるまで5〜10株程度実施し、防除要否を判定する。
- 卵塊数の調査時期は、産卵ピークとなる日を中心として約10日間である。
- 薬剤は防除基準に基づいて使用するが、有機りん系及びカーバメート系薬剤に抵抗性の個体群が広範囲に認められているので薬剤の選定には十分注意する。
- 老齢幼虫になると防除効果が劣るので注意する。
イネドロオイムシ防除要否決定用の調査シート「北の虫見番」へ
フタオビコヤガ 発生期:やや早 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 前年は全道的には平年並の発生で、予察田における第3回目成虫の発生量は少なめだったことから、越冬蛹密度は平年並程度にとどまっているものと思われる。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されていることから、発生量は平年並、4月以降の高温経過により発生期はやや早まるものと予想される。
- 防除対策
- 7月下旬以降に発生する2回目以降の幼虫が防除対象である。
- 幼虫や水面に浮いている笹舟型の蛹を見つけたら、次世代の発生に注意する。
うどんこ病 発生期:既発(早〜やや早) 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 乾燥気味の気象条件は本病菌の増殖に好適である。また曇雨天が続くと発生は助長される。
- 予察ほでの初発は早〜やや早く、発生量はやや多〜多く推移している。
- 普及センターからの報告によると、発生は認められているが、発病は下位葉にとどまっている。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されている。
- 防除対策
-
穂・止葉・次葉(止葉の1枚下の葉)の発病を抑えれば減収しないことから、主要品種「ホクシン」では止葉展開期から、また感受性品種では次葉展開期から薬剤防除を開始する。
- 耐性菌の出現を防ぐため、同一系統の薬剤の連用を避け、異なる系統の薬剤を組み合わせて使用する。
赤さび病 発生期:既発(早) 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は高温少雨で発病が助長される。
- 予察ほでは、すでに長沼町で平年より早く初発が認められているが、現在の発生量はほぼ平年並みである。訓子府町と芽室町では未発生である。
- 普及センターからの報告によると、一部の地域で発生が認められているが、発病は下位葉にとどまっている。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されている。
- 防除対策
- 被害許容水準は、開花始の止葉の病葉率が25%である。抵抗性弱の「ホクシン」では、「止葉抽出〜穂ばらみ期と、開花始め」の2回薬剤散布を行う。なお、薬剤によって残効期間が異なるため注意する。
- 抵抗性「中」以上の品種では、「開花始め」の1回の薬剤散布で対応できる。
赤かび病 発生量:やや多 <5/15付け、注意報第1号発表>
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は、開花期ころがもっとも感染しやすく、出穂期〜乳熟期に雨天・霧などによる多湿条件があると多発する。
- 秋まき・春まきの開花期を迎える6月の天気は前半にぐずつく時期があり、後半は周期的に変わると予報されており、発生量はやや多くなると予想される。
- 防除対策
- 薬剤散布は、少なくとも「開花始め〜開花期、その7日後」の2回行い、天候不順の場合にはその後1〜2回の追加散布を行う。
- 小麦の出穂期は秋まき・春まきとも1〜2週間早まると予想されるため、防除開始時期を失しないようにする。
- 山麓・海岸沿い・河川沿いなど、地形的に濃霧が発生する地域では特に注意する。
アブラムシ類 発生期:早 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 4月以降高温経過で、小麦の出穂期も早まっていることから発生期は早い。6月の気温・降水量とも平年並と予報されていることから発生量は平年並と予想される。
- 防除対策
- アブラムシの寄生密度が高まるのは出穂期の10〜20日後であるので、この時期の発生状況に注意する。
- 収量に影響が出るのは1穂当たり寄生頭数7〜11頭程度である。ほ場内の穂に高い割合でこのような寄生を認めない限り薬剤防除は不要である。
- 防除を必要とするような発生に至ることはまれである。
茎疫病(大豆・小豆) 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は、転換畑などの排水不良のほ場や、多雨などでほ場が滞水すると多発する。
- 6月の降水量は平年並と予報されている。
- 防除対策
- 本病は過湿土壌で発生しやすいので、転換畑や排水不良のほ場では排水対策を講ずるとともに、防除基準に基づき薬剤散布を行う。
炭そ病(菜豆) 発生期:並 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は多湿条件で発病が助長される。
- 6月の降水量は平年並と予報されている。
- 菜豆の主要品種は炭そ病に抵抗性であり、また近年少発生に推移しているため、発生量は平年並の少発生と予想される。
- 防除対策
- ほ場をよく観察し、初発を確認したら防除基準に基づき薬剤散布を行う。
ジャガイモヒゲナガアブラムシ 発生期:既発(早) 発生量:やや多
- 発生経過と予報の根拠
- 有翅虫の発生期が早いほど飛来量が多くなる傾向が認められている。
- 6月の気温は平年並と予報されており、これまでの積算温量とあわせると1回目の有翅虫の発生は平年より10日程度早まることが予想される。
- 4月以降の高温乾燥経過は越冬地における生育にとって好適だったものと思われる。
- 本種が媒介する大豆わい化病・菜豆黄化病の発生もやや多くなるものと予想される。
- 防除対策
- 出芽直後に有翅虫が飛来した場合、粒剤の効果が現れない場合があるので、茎葉散布を実施する。薬剤によっては薬害が生ずるので注意する。
疫病 発生期:やや早 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は低温多雨で発病しやすい。
- 6月は気温・降水量とも平年並であるが、後半の天気は周期的に変わると予報されている。また、これまでの気象経過から萌芽期が早まると考えられるため発生期はやや早くなると予想される。
- 防除対策
- 初発生期予測システム(FLABS)による初発生期予察情報を活用し、初期防除の適正化をはかる。
- フェニルアマイド系薬剤には一部地域で耐性菌が認められているので、薬剤の選択には注意する。
本年からFLABSの計算結果を防除所のホームページに掲載します。
ばれいしょの主要産地・約25地点に付いて随時更新します。
ナストビハムシ 発生期:やや早 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- これまでの高温乾燥に加えて6月の気温は平年並と予報されていることから発生期はやや早まることが予想される。
- 越冬量は平年並でこれまでの気象経過により越冬成虫の活動は活発だったものと思われるが、6月前半はぐずつく時期があると予報されており、発生量は平年並程度と予想される。
- 防除対策
- 土壌施用剤を施用していないほ場では、成虫の侵入盛期(6月中旬〜下旬)に茎葉散布を実施する。
アブラムシ類 発生期:既発(早) 発生量:やや多
- 発生経過と予報の根拠
- 4月以降の高温経過からジャガイモヒゲナガアブラムシの発生は平年より10日前後早まっている。
- ジャガイモヒゲナガアブラムシの生育は4月以降の好天経過から順調で、有翅虫の発生はやや多くなると予想される。
- 防除対策
- 採種ほ場では、土壌施用剤の効果が低下する時期から茎葉散布を実施する。
ヨトウガ(第1回) 発生期:早 発生量:やや少
- 発生経過と予報の根拠
- 前年の2回目の発生量は、全道的に少なめだった。
- 4月以降の高温経過から発生期は早まるものと予想される。
- 6月は気温、降水量共に平年並と予報されているが、越冬密度が高くはないため発生量はやや少ないものと予想される。
- 防除対策
- 茎葉散布は被害株率が50%に達した時点で行い、1回の防除で十分である。
黒星病 発生期:やや早 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は開花直前からの多雨で多発し、その後の冷涼多雨で二次伝染が多くなる。
- りんごの生育は10日前後早まっているので、発生期はやや早いと考えられる。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されている。
- 防除対策
- 重点防除時期は、開花前から落花10〜20日後である。
- 昨年発生が見られた園地では特に発生状況に注意する。また、発生園では防除間隔を10日以上あけない。
斑点落葉病 発生期:並 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は高温多湿で発病が助長される。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されている。
- 防除対策
- 防除基準に基づいて薬剤散布を行う。
腐らん病 発生量:多
- 発生経過と予報の根拠
-
融雪後の発生量は多く経過している。
- 防除対策
- 7月になると病斑が見づらくなるので、なるべく早く被害部の削り取りを行い、薬剤を塗布する。
- 病斑を除去してもその周辺から再発する可能性があるので、その後も気をつけて観察を続ける。
- 切り落とした罹病枝、削り取った樹皮を園外に持ち出し処分する。
ハダニ類 発生期:既発(早) 発生量:やや少〜並
- 発生経過と予報の根拠
- 前年の発生量は平年並だったが、越冬卵密度は低かった。
- 4月以降は高温経過で、予察ほにおけるリンゴハダニのふ化は早かった。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されていることから、発生量はやや少ないか平年並程度にとどまるものと予想される。
- 防除対策
- 同一系統の薬剤を使用すると薬剤抵抗性の発達が急速に進むので、異なる系統の薬剤をローテーション散布する。
ハマキムシ類 発生期:既発(早) 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 前年の発生量は平年並だった。卵越冬種の越冬卵密度は長沼、余市、仁木いずれにおいてもやや低かった。
- 4月以降の高温経過により、卵越冬種ミダレカクモンハマキのふ化は早まった。
- 開花直前の被害花そう率は、長沼町で平年並、余市町・仁木町ではやや低かった。
- 6月は気温・降水量ともに平年並と予報されていることから、発生量は平年並程度になるものと予想される。
- 防除対策
- 防除基準に基づいて薬剤散布を実施する。
キンモンホソガ 発生期:既発(早) 発生量:やや多
- 発生経過と予報の根拠
- 長沼町の予察園における成虫のフェロモントラップによる誘殺始は早かった。
- 前年の発生は多めだったことから発生量はやや多めになるものと予想される。
- 防除対策
- 防除基準に基づいて薬剤散布を実施する。
白斑葉枯病 発生期:並 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は多湿条件で多発する。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されている。
- 防除対策
- ほ場観察を行い初期防除に努める。
タマネギバエ・タネバエ 発生量:やや少
- 発生経過と予報の根拠
- 前年の発生量は、全道的に平年並であった。
- 4月〜5月の気象経過が良好で移植も順調に進み、苗の活着もよいことから被害の発生量はやや少ないものと予想される。
- 有機物を施用したほ場や苗の状態の悪いほ場では注意が必要である。
ネギアザミウマ 発生期:並 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 6月の気温は平年並と予報されていることから、成虫の発生期は平年並と予想される。
- 6月は気温・降水量ともに平年並と予報されていることから、発生量は平年並程度にとどまるものと予想される。
- 防除対策
- 防除開始時期は、成虫の寄生株率が10%以上になったら10日以内、または簡易トラップで多飛来が認められてから5日以内とする。
- 追加防除は、寄生程度指数20、寄生株率50%をめやすに行う。
モンシロチョウ 発生期:既発(やや早) 発生量:やや少
- 発生経過と予報の根拠
- 前年秋の幼虫数が少なかったことから、越冬蛹の密度は低めと推測される。
- 4月以降の高温経過により第1回成虫の発生期は平年よりやや早かった。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されていることから、大きな変化はなく、やや少なめの発生が見込まれる。
- 防除対策
- 成虫の飛来が目立ち産卵が多いほ場では、防除基準に基づいて薬剤散布を行う。
- 防除にあたっては、他害虫の発生に注意し、同時防除できる薬剤を選択する。
コナガ 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 現在までのフェロモントラップによる誘殺数は平年より多めに経過している。
- 本種によるキャベツの被害は平均気温15℃以上に達した時期から始まるとされる。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予報されていることから、発生量は平年並と予想される。
フェロモントラップによる誘殺数の推移
地点 |
長沼 |
大野 |
調査月半旬 |
本年 |
平年 |
本年 |
平年 |
5.T |
50 |
4 |
32 |
3 |
5.U |
76 |
11 |
9 |
4 |
5.V |
38 |
18 |
68 |
9 |
5.W |
13 |
22 |
40 |
27 |
- 防除対策
- 6月以降にも多飛来することがあるので、発生状況に十分注意する。
- 薬剤抵抗性が発達した害虫なので、ローテーション散布を実施する。なお、合成ピレスロイド系殺虫剤では抵抗性個体群が出現しているので、単剤では使用しない。
- 防除にあたっては他害虫の発生に注意し、効率的な防除体系を組み立てる。
灰色かび病 発生量:並
- 発生経過と予報の根拠
- 本病は低温・多湿条件で多発する。施設栽培では管理条件によって発生が大きく左右される。
- 6月は気温・降水量とも平年並と予想されているが、換気不良などハウス管理によっては発病に好適な環境になりやすいので注意する。
- 防除対策
- 換気や灌水方法などハウス管理を適切に行う。
- 多発してから防除を開始しても効果は期待できないので、発病初期からの防除を心がける。
- 耐性菌の出現を防ぐためローテーション散布を実施する。一部の地域では、ジカルボキシイミド系剤、ジエトフェンカルブ・チオファネートメチル水和剤の耐性菌が確認されているため、薬剤の選択には特に注意する。
付記
北海道地方 3か月予報
(6月から8月までの天候見通し)
平成14年5月20日
札幌管区気象台発表
3か月(6〜8月)の気温の各階級の確率(%)
[気温]
3か月平均気温は、平年並の可能性が大きく、その確率は50%です。
[可能性の大きな天候見通し]
- 6月
- 前半はぐずつく時期がありますが、後半は天気は周期的に変わる見込みです。気温は平年並の見込みです。
- 7月
- 天気は概ね周期的に変わるでしょう。後半は太平洋高気圧に覆われて晴れて暑い日がある見込みです。気温は平年並の見込みです。
- 8月
- 太平洋高気圧に覆われ晴れて暑い日が多いですが、上空の寒気の影響で天気のぐずつく時期がある見込みです。気温は平年並の見込みです。
3か月間降水量は平年並でしょう。
要素 |
予報対象地域 |
6月 |
7月 |
8月 |
気温 |
北海道全域 |
平年並 |
平年並 |
平年並 |
降水量 |
北海道全域 |
平年並 |
平年並 |
平年並 |
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