平成13年度 病害虫発生予察情報 第16号

8月月報

平成13年9月10日 北海道病害虫防除所

(連絡先:予察課 Tel.01238(9)2080(内)323

     Fax.01238(9)2082)

 


前編 後編
気象概況
A.水稲
B.とうもろこし
C.豆類
D.ばれいしょ

E.てん菜
F.りんご
G.たまねぎ
H.あぶらな科野菜

I.気象概況

──『低温・並雨・並照』オホーツク海高気圧の影響で前半を中心に低温──

上旬はオホーツク海高気圧の影響で、気温がかなり低くなった。その後、太平洋側を除いて平年並で経過したが、月平均では低温となり、真夏日を観測した官署が少なかった。また、中旬は高気圧に覆われ晴れた日が多く、降水量はかなり少なく推移したが、下旬は台風第11号の上陸や低気圧の影響でまとまった雨が降り、月降水量は平年並となった。日照時間は、全道平均では平年並となったが、日本海側とオホーツク海側で多照、太平洋側では寡照と、地域による差が大きかった。

上旬:1〜2日はオホーツク海高気圧の張り出しに入り、曇って所々で弱い雨が降ったが、日本海側では晴れた所があった。3日は気圧の谷が通過し、全道的に雨が降り、降水量は南西部の多い所で30ミリ前後。4日は気圧の谷の影響で、東部では曇って弱い雨の降った所があったが、その他の地方では晴れた。5〜8日はオホーツク海高気圧の影響で、太平洋側を中心に曇って所により霧雨が降ったが、その他の地方では晴れた。9日はオホーツク海側では晴れたが、その他の地方では前線の通過で雨が降った。降水量は北部や南西部の多い所で30ミリ前後。10日は日本海から低気圧が接近し、太平洋側を中心に雨が降り、降水量は様似町幌満61ミリ、広尾48ミリ等、多い所で40〜60ミリ。

中旬:11日は日本海側やオホーツク海側は概ね晴れたが、北海道の南岸に停滞した前線の影響で太平洋側東部を中心に雨が降り、降水量は浜中町茶内原野58ミリ等、多い所で50〜60ミリ。12〜13日は高気圧に覆われ、太平洋側の一部を除き概ね晴れた。日最高気温は12日今金30.0℃と、ほぼ3週間ぶりに道内で真夏日を観測した。14〜16日は高気圧に覆われ、太平洋側を除き概ね晴れ、内陸部を中心に真夏日となり、16日は旭川で日最高気温30.7℃と、今年初の真夏日となった。17日は気圧の谷の影響で、太平洋側を中心に雨が降り、降水量は洞爺湖温泉30ミリ等、胆振管内の多い所で20〜30ミリ。18〜20日はサハリン方面から南下した高気圧に覆われ概ね晴れた。

下旬:21日は高気圧に覆われ、太平洋側の一部を除き晴れた。内陸部を中心に真夏日となり、日最高気温は富良野33.2℃と今年の全道の最高気温となった。22日〜23日は2年ぶりに上陸した台風第11号の影響で、全道的に雨や風が強く、太平洋側を中心に大荒れの天気となり、停電・土砂崩れなどの被害が発生した。総降水量は支笏湖畔274ミリ、登別市森野264ミリ、最大瞬間風速は22日函館・23日浦河共に27.7メートル等。24〜25日は高気圧の張り出しの中に入り、概ね晴れた。26日は気圧の谷の影響で大気の状態が不安定となり、南西部や内陸部で局地的に雨や雷雨となった。27日〜29日は上空に寒気を伴った動きの遅い低気圧の影響で、全道的に雨や雷雨となり、南西部を中心に大雨となった。総降水量は美国136ミリ、南茅部121ミリ等、多い所で100〜140ミリ。30日は気圧の谷の影響で大気の状態が不安定になり、局地的に雨や雷雨となった。31日は北海道の南海上を通過した低気圧の影響で全道的に曇りや雨となった。降水量は標津49ミリ、厚岸町太田38ミリ等、太平洋側や南西部を中心に多い所で30〜50ミリ。

気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 -1.3℃ 80% 103%
太平洋側8地点平均 -1.7℃ 85% 73%
オホーツク海側4地点平均 -1.2℃ 51% 125%
日本海側10地点平均 -1.0℃ 89% 118%


II.病害虫発生概況

A.水稲

1.いもち病 葉いもち     発生量  やや多
予察田における発生量は岩見沢市および比布町で平年より多く、大野町で少なかった。巡回調査によると、一般田では渡島・檜山・上川・留萌・胆振および日高支庁管内の一部で多発した。

地点 品種名 発病度 平年数
8.II 8.IV 8.VI
本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 6.0 27.0 10.0 27.0 11.0 27.0 1
しまひかり 25.0 46.1 25.0 51.4 25.0 50.0 10
岩見沢市 キタヒカリ 75.0 37.6 65.0 44.1 91.0 43.3 10
きらら397 71.0 14.4 75.0 16.8 79.0 11.0 10
比布町 きらら397 50.0 25.7 50.0 25.7 50.0 29.2 7
ほしのゆめ 75.0 38.4 75.0 40.8 75.0 39.6 5

       穂いもち     発生期  やや早   発生量  並〜やや多
予察田における発生期は、大野町は遅く、岩見沢市および比布町では早かった。発生量は、大野町で少、岩見沢市および比布町では多であった。巡回調査によると、一般田では空知・上川および日高支庁管内の一部でやや多発した。
穂いもち病穂率と節いもち病茎率の表を一部訂正しました。

地点 品種名 枝梗いもち初発日 首いもち初発日 節いもち初発日
本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 8月29日 8月5日 8月30日 8月18日 未発生 8月23日
しまひかり 8月13日 8月10日 8月27日 8月17日 8月30日 8月25日
岩見沢市 キタヒカリ 8月9日 8月16日 8月13日 8月18日 8月10日 8月20日
きらら397 8月9日 8月23日 8月12日 8月26日 8月10日 8月27日
比布町 きらら397 8月5日 8月10日 8月5日 8月16日 8月7日 8月18日
ほしのゆめ 8月3日 8月6日 8月3日 8月12日 8月7日 8月13日

地点 品種名 8.VI 平年数
穂いもち病穂率(%) 節いもち病茎率(%)
本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 1.6 99.0 0.0 10.6 1
しまひかり 58.0 83.8 0.4 5.0 10
岩見沢市 キタヒカリ 100.0 42.9 14.1 7.0 10
きらら397 97.9 15.1 6.4 1.6 10
比布町 きらら397 44.2 33.3 18.0 3.0 7
ほしのゆめ 94.6 50.7 71.5 12.8 5

巡回調査データ (病株率:%)
支庁 普及センター 葉いもち 穂いもち 支庁 普及センター 葉いもち 穂いもち
8月3半旬 8月6半旬 8月3半旬 8月6半旬
石狩 石狩中部
石狩南部
石狩北部
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
上川 旭川
士別
上川中央
大雪
富良野
名寄
14.4
0.0
8.0
3.3
1.0
1.0
10.0
0.0
0.2
0.0
1.0
0.0
渡島 渡島中部
渡島南部
8.8
0.0
0.8
0.0
檜山 檜山南部
檜山北部
48.4
0.0
-
-
留萌 中留萌
南留萌
3.4
4.8
0.0
0.4
後志 中後志 0.0 -
空知 空知西部
空知中央
空知東部
空知南西部
空知南東部
空知北部
0.0
0.0
0.0
0.0
0.0
1.8
0.0
0.0
0.0
0.0
-0
4.0
胆振 東胆振 7.3 -
日高 日高西部 21.7 10.0

2.紋枯病   発生期   並  発生量  やや少
予察田における発生期は大野町で遅く、岩見沢市で早かった。発生量は大野町で少、岩見沢市では平年並であった。

地点 品種名 初発日 8月6半旬 平年数
発病株率(%) 発病茎率(%) 発病度
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 未発生 8月2日 0.0 24.0 0.0 18.7 0.0 13.0 1
しまひかり 8月27日 8月2日 20.0 37.0 11.2 24.1 5.0 17.7 10
岩見沢市 キタヒカリ 8月1日 8月9日 28.0 24.0 12.6 9.9 10.0 8.8 10

3.葉しょう褐変病     発生量  やや少
予察田における発生量は岩見沢市で平年並、比布町で少なかった。

4.褐変穂       発生量  やや多
予察田における発生量は岩見沢市で平年より多かった。
 
5.ヒメトビウンカ    発生量  やや少〜並
水田内でのすくい取り数は、大野町で平年よりも多く、岩見沢市・比布町では平年並となっている。予察灯による誘殺数は、岩見沢市でやや多く、大野町・比布町では平年よりも少ない。
巡回調査によると、後志および空知支庁管内の一部を除きすくい取り数は少ない。

月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数(本田)
大野町 岩見沢市 比布町 大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
8・I 1 4.8 0 100.0 0 48.1 90.0 12.9 95.0 55.4 145.0 79.3
8・II 1 3.3 0 78.1 0 12.7 65.0 9.5 46.7 89.4 66.7 70.6
8・III 0 6.4 1 48.0 2 7.3 60.0 14.3 31.3 90.1 20.0 76.9
8・IV 0 12.3 95 192.7 1 1.6 45.0 15.0 55.0 168.2 35.0 44.5
8・V 4 33.9 675 183.8 5 5.1 150.0 35.0 543.3 402.3 152.5 157.9
8・VI 8 24.1 207 200.5 0 54.9 400.0 87.6 982.5 478.2 482.0 302.0
注)すくい取り数は20回振り×5日分の合計値。

ヒメトビウンカ水田すくい取り数 巡回調査データ
支庁 普及センター 8月3半旬 支庁 普及センター 8月3半旬
石狩 石狩南部
石狩中部
石狩北部
0.0
3.5
0.0
上川 富良野
大雪
旭川
上川中央
士別
名寄
0.3
0.0
0.0
0.3
2.0
0.0
渡島 渡島南部
渡島中部
0.2
0.0
檜山 檜山南部
檜山北部
0.2
0.1
留萌 南留萌
中留萌
1.6
0.8
後志 中後志 8.0
空知 空知南西部
空知中央
空知東部
空知西部
空知北部
0.0
0.0
12.3
0.0
8.1
胆振 東胆振 0.0
日高 日高西部
日高東部
0.0
5.3
注)捕虫網20回振りの捕獲虫数を示す。

6.セジロウンカ   発生量  並
大野町では8月5半旬以降すくい取り数が多くなっているが、岩見沢市では平年並で、比布町ではやや少なかった。

月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数(本田)
大野町 岩見沢市 比布町 大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
8・I 8 71.1 0 6.9 0 6.9 40.0 24.0 8.3 8.2 5.0 2.6
8・II 18 571.7 0 12.6 0 12.6 15.0 17.1 0.0 12.2 5.0 6.3
8・III 4 368.6 0 8.3 0 8.3 30.0 8.8 8.8 10.1 0.0 11.6
8・IV 5 397.6 0 2.1 0 2.1 12.5 15.2 7.5 12.3 0.0 8.3
8・V 85 186.4 2 9.8 0 9.8 95.0 42.5 41.7 35.8 20.0 19.5
8・VI 22 63.4 0 11.4 0 11.4 80.0 40.5 45.0 67.6 16.0 60.1
注)すくい取り数は20回振り×5日分の合計値。

7.アカヒゲホソミドリカスミカメ  発生量  少〜やや少
各定点とも、誘殺数・すくい取り数ともに平年よりも少なく推移している。
巡回調査によると、各地とも水田内発生量は少ない。

月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数(本田)
大野町 岩見沢市 比布町 大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
8・I 2 61.4 66 638.0 0 69.3 0.0 1.8 10.0 21.9 2.5 6.2
8・II 8 28.4 36 573.0 3 43.7 0.0 3.9 8.3 35.7 0.0 3.7
8・III 19 25.5 26 485.0 7 6.6 0.0 1.3 2.5 17.4 0.0 2.3
8・IV 3 14.3 85 253.4 5 1.3 2.5 1.8 0.0 7.8 1.7 0.7
8・V 10 13.4 689 187.0 7 4.7 0.0 2.5 3.3 16.2 0.0 4.2
8・VI 7 5.0 495 142.4 4 2.7 0.0 3.3 10.0 19.7 0.0 6.6
注)すくい取り数は20回振り×5日分の合計値。

アカヒゲホソミドリカスミカメ水田すくい取り数 巡回調査データ
支庁 普及センター 8月3半旬 支庁 普及センター 8月3半旬
石狩 石狩南部
石狩中部
0.3
0.0
上川 富良野
大雪
旭川
上川中央
名寄
0.0
0.0
0.1
0.0
0.3
渡島 渡島南部
渡島中部
0.0
0.0
檜山 檜山南部
檜山北部
0.0
0.0
留萌 南留萌
中留萌
0.8
0.0
後志 中後志 0.0
空知 空知南東部
空知南西部
空知中央
空知東部
空知西部
0.0
0.4
0.6
0.6
0.0
胆振 東胆振 0.0
日高 日高西部
日高東部
0.0
0.0
注)捕虫網20回振りの捕獲虫数を示す。

8.フタオビコヤガ    発生量  少
予察灯による誘殺数は各定点とも平年より少なかった。

月・半旬 成虫誘殺数
大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年
8・I 2 65.9 5 607.0 24 688.7
8・II 23 55.8 87 651.8 149 342.0
8・III 17 1.0.5 130 1118.3 114 269.3
8・IV 5 31.2 65 1794.9 12 96.9
8・V 0 16.1 96 718.3 7 34.1
8・VI 3 7.4 14 208.0 0 10.9

B.とうもろこし

1.アワノメイガ       発生量  少
予察灯・フェロモントラップとも、8月は全く成虫が誘殺されていない。

C.豆類

1.大豆のべと病     発生量  やや少
長沼町の予察ほにおける発生量は、「トヨムスメ」で平年並、「キタホマレ」で少なかった。

2.大豆のわい化病    発生量  少

3.小豆・菜豆の炭そ病      発生量  やや多
芽室町の予察ほ(菜豆)での発生量は平年より多かった。

4.菌核病            発生量  菜豆豆:少   大豆・小豆:やや多
芽室町の予察ほ(菜豆)での発生量は少なかった。一般ほでは、十勝支庁管内の一部で、大豆・小豆での発生が目立った。

5.灰色かび病           発生量  やや多
予察ほにおける発生量は、長沼町の小豆で少、芽室町の菜豆で多であった。巡回調査によると、後志および十勝支庁管内の一部で多発した。

6.小豆のアズキノメイガ   発生量  並
長沼町・芽室町とも、8月は全く成虫が誘殺されていない。予察ほでの被害は、長沼町で多めであるが芽室町ではやや少なかった。

7.アブラムシ類      発生量  少  

8.食葉性鱗翅目幼虫        発生量  並  
訓子府町の定点ほの大豆での被害葉率は平年よりもやや高かったが、小豆では少なく、長沼町の大豆では平年並であった。

D.ばれいしょ

1.疫病             発生量  やや多
予察ほにおける発生は、各地点とも平年より早くに病勢が進展し、発生量は多かった。

地点 品種名 発病度(8月2半旬) 平年数
本年 平年
大野町 男爵薯 100.0 100.0 10
長沼町 男爵薯 98.5 37.4 10
農林1号 55.0 15.3 10
訓子府町 男爵薯 100.0 69.9 10
紅丸 100.0 55.9 10
芽室町 男爵薯 89.0 77.7 10
紅丸 63.0 72.4 10

2.アブラムシ類       発生量  少
ワタアブラムシの発生は各定点とも少なかった。ジャガイモヒゲナガアブラムシ、モモアカアブラムシの発生はほぼ終息しており、黄色水盤による誘殺数・寄生虫数ともごく少なかった。

後半(てんさい、りんご、たまねぎ、あぶらな科野菜)へ続く

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