平成12年度 病害虫発生予察情報 第23号

8月月報

平成12年9月20日 北海道病害虫防除所

(連絡先:予察課 Tel.01238(9)2080(内)323

     Fax.01238(9)2082)

 


前編 後編
気象概況
A.水稲
B.とうもろこし
C.豆類
D.ばれいしょ

E.てん菜
F.りんご
G.たまねぎ
H.あぶらな科野菜

I.気象概況

──『高温・並雨・多照』月初めに猛暑、下旬に前線の影響で大雨──

 期間の初めは太平洋高気圧に覆われ厳しい暑さとなり、その後も中旬は高気圧に覆われて晴れの日が多く、下旬は南から暖かく湿った空気が流入したため、気温は高めに経過した。また、月降水量は平年より少なかったが、下旬は前線や気圧の谷の影響で南西部を中心に多雨となった。

上旬:1〜3日は太平洋高気圧に覆われ概ね晴れて、内陸部を中心に真夏日となった。特に1日は厳しい暑さとなり、日最高気温は津別37.4℃、札幌35.9℃(共に8月の第2位)、小樽34.9℃(観測史上第1位)。4〜7日は前線や気圧の谷の影響で曇りや雨の日が多く、特に4〜6日は大気の状態が不安定になり太平洋側や内陸部では局地的に大雨となった。日降水量は4日上士幌48ミリ、5日三石63ミリ、6日えりも岬60ミリ等。8日は気圧の谷の影響で東部や北部を中心に曇りで雨の所もあったが、南西部や日本海側では晴れた所が多かった。9日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、太平洋側を中心に曇りや霧、霧雨の所があった。10日は高気圧に覆われ東部を中心に初め晴れたが、気圧の谷の接近で次第に曇り、夜には北部から雨が降り出した。

中旬:11日は低気圧が通過し全道的に雨が降り、北部や日本海側を中心に大雨となった。日降水量は音威子府118ミリ、初山別110ミリ、浜頓別94ミリ、焼尻92ミリ等。12〜14日は高気圧に覆われて晴れた。15日は気圧の谷が通過し曇りや雨となった。また、大気の状態が不安定となり、内陸部や胆振東部で局地的に雷を伴う大雨となった。日降水量は穂別189ミリ、日高79ミリ、鵡川77ミリ等。16〜17日は初め南西部や太平洋側では曇りや雨の所があったが、16日昼頃から高気圧の張り出しで晴れた。18〜20日は内陸部や南西部では高気圧の張り出しで晴れた所が多かったが、18日は太平洋側東部で、19〜20日はオホーツク海側や太平洋側で曇りや霧雨の所があった。

下旬:21日は気圧の谷の接近で曇りの所が多かった。22〜23日は気圧の谷の影響で概ね曇りで、暖かく湿った空気が流入して南西部や北部で局地的に雷を伴う激しい雨となった。日最大1時間降水量は22日乙部町潮見38ミリ、23日上ノ国町石崎49ミリ等。24日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、北部やオホーツク海側では気圧の谷の影響で曇りや雨となった所があった。25〜26日は低気圧の通過で25日夜から雨が降り出し、日本海側を中心に大雨となった。総降水量は乙部町潮見141ミリ、今金131ミリ等、多い所で100〜140ミリ。27日は高気圧の張り出しで、日本海側を中心に概ね晴れたが、オホーツク海側や東部を中心に曇りや霧雨の所があった。28日は前線の影響で南西部を中心に大雨となり、特に渡島半島では局地的に雷を伴う激しい雨が降った。日最大1時間降水量は熊石52ミリ、奥尻42ミリ等。29〜31日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、29日は東部や南西部で、30〜31日は北部や太平洋側で曇りや雨の所があった。

気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 +1.8℃ かなり高 69% 117% やや多
太平洋側8地点平均 +1.5℃ かなり高 64% 119% やや多
オホーツク海側4地点平均 +2.1℃ かなり高 49% やや少 112%
日本海側10地点平均 +1.9℃ かなり高 81% 117% やや多


II.病害虫発生概況

A.水稲

1.いもち病 葉いもち     発生量  やや多
予察田における発生量は大野町および比布町の「きらら397」で平年並、岩見沢市で多、比布町の「ほしのゆめ」で少であった。普及センターからの報告によると、一般田では全道的にやや多発生であった。
地点 品種名 発病度 平年数
8.II 8.IV 8.VI
本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 27.0 - 27.0 - 27.0 - 0
しまひかり 50.0 42.3 50.0 47.8 50.0 - 10
岩見沢市 キタヒカリ 58.0 35.3 65.0 41.7 - 43.1 10
きらら397 0.0 0.2 10.0 4.5 - 9.8 10
比布町 きらら397 25.0 25.8 26.0 25.7 26.0 29.8 6
ほしのゆめ 25.0 41.8 28.0 44.0 28.0 42.5 4

       穂いもち     発生量  やや多
予察田における発生期は、水稲の生育が早かったことからいずれの地点も早かった。発生量は、大野町および岩見沢市ではやや多から多、比布町では少であった。普及センターからの報告によると、一般田では渡島・檜山・上川・胆振および日高支庁管内で被害許容水準を超える発生が見られるなど全道的にやや多発生であった。
地点 品種名 枝梗いもち初発日 首いもち初発日 節いもち初発日 平年数
本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 8月5日 - 8月18日 - 8月23日 - 0
しまひかり 8月4日 8月14日 8月12日 8月19日 8月20日 8月25日 10
岩見沢市 キタヒカリ 8月4日 8月16日 8月4日 8月18日 8月13日 8月20日 10
きらら397 8月4日 8月26日 8月4日 8月28日 8月18日 8月29日 10
比布町 きらら397 8月1日 8月11日 8月3日 8月18日 8月15日 8月18日 6
ほしのゆめ 8月1日 8月8日 8月4日 8月14日 8月14日 8月13日 4

地点 品種名 8.VI 平年数
穂いもち病穂率(%) 穂いもち病穂率(%)
本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 99.0 - 10.6 - 0
しまひかり 100.0 79.6 6.4 4.6 10
岩見沢市 キタヒカリ 99.0 39.0 12.0 7.9 10
きらら397 37.9 11.4 3.3 1.2 10
比布町 きらら397 8.0 37.1 0.2 3.4 6
ほしのゆめ 7.3 61.6 1.4 20.6 4

2.紋枯病   発生期  やや早   発生量  並
予察田における発生期は大野町で平年並、岩見沢市で早かった。予察田における発生量は大野町でやや少、岩見沢市で多であった。一般田では平年並の少発生であった。
地点 品種名 初発日 8月6半旬 平年数
発病株率(%) 発病茎率(%) 発病度
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 8月2日 - 24.0 - 18.7 - 13.0 - 0
しまひかり 8月1日 8月2日 36.0 40.2 15.1 26.0 12.0 20.0 10
岩見沢市 キタヒカリ 7月31日 8月8日 44.0 20.4 23.4 8.1 19.0 7.2 10

3.葉しょう褐変病     発生量  少
予察田における発生量は岩見沢市および比布町とも少なかった。
4.褐変穂       発生量  並
予察田における発生量は岩見沢市で平年並であった。
 
5.ヒメトビウンカ    発生量  やや多  
8月の高温経過から、比布町で誘殺数は少ないものの、水田内の成虫数は岩見沢市・大野町・比布町とも多めの発生となった。普及センターの報告によると士別市で多い以外は、水田内では少なめである。
月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数(本田)
岩見沢市 大野町 比布町 岩見沢市 大野町 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
8・I  750 27 6 6 91 41 132 47 68 12 62 82
8・II  156 67 9 3 4 14 153 125 35 7 45 75
8・III  49 59 0 9 4 8 177 264 3 18 75 77
8・IV  234 199 12 17 0 2 520 386 48 20 152 27
8・V  480 224 280 30 7 5 542 526 90 42 357 125
8・VI  453 169 209 71 0 64 618 504 135 103 756 226

6.セジロウンカ   発生量  多
大野町では誘殺量は平年よりやや少なかったが、岩見沢市・大野町・比布町とも水田内の発生量は多かった。
月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数(本田)
岩見沢市 大野町 比布町 岩見沢市 大野町 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
8・I  37 3 67 65 37 6 25 6 198 54 18 0
8・II  23 10 136 559 3 3 27 10 140 87 17 5
8・III  1 10 14 382 1 5 15 21 20 33 3 13
8・IV  0 5 4 527 0 3 28 23 70 66 35 4
8・V  18 12 566 162 3 5 92 30 355 195 62 13
8・VI  7 11 103 59 1 3 300 44 260 141 376 8

7.アカヒゲホソミドリカスミカメ  発生量  並〜やや多
岩見沢市・比布町では第2回成虫誘殺数は平年より多く、岩見沢市は第3回成虫誘殺数も多くなった。水田でのすくい取り数は、岩見沢市・比布町で8月6半旬に多かったが、ほぼ平年並の発生であった。普及センターからの報告によると、一般田では一部多いところもあったものの、平年並の発生であった。
月・半旬 成虫誘殺数 すくい取り成虫数(本田)
岩見沢市 大野町 比布町 岩見沢市 大野町 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
8・I  937 559 17 14 121 61 25 20 8 1 0 7
8・II  354 542 16 28 17 48 15 34 12 3 0 4
8・III  404 451 1 26 9 6 18 18 3 1 3 2
8・IV  461 211 13 15 0 2 8 7 3 2 3 1
8・V  252 168 26 12 5 5 7 17 3 2 0 0
8・VI  277 116 5 7 7 2 34 16 0 3 6 1

8.フタオビコヤガ    発生期  やや早  発生量 やや多
予察灯による第3世代成虫の初発期は、比布町では7月29日(平年:7月27日)と平年並であった。発生量は8月前半は平年より多かったが、後半は少なくなった。普及センターからの報告によると、空知支庁管内で発生が目立ったところもあった。
月・半旬 成虫誘殺数
岩見沢市 大野町 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年
8・I 1684  460 216 86 2413 401
8・II 301  635 80 53 189 368
8・III 54  1122 1 132 15 312
8・IV 28  1796 1 32 0 113
8・V 2  717 14 15 4 39
8・VI 0  209 2 8 1 13

B.とうもろこし

1.アワノメイガ       発生量  少
フェロモントラップによる誘殺では、大野町で8月3半旬に1頭が捕獲されただけであった。

C.豆類

1.大豆のべと病     発生量  少
長沼町の予察ほにおける発生量は、平年より少なかった。

2.大豆のわい化病    発生量  やや少
普及センターからの報告によると、一般ほでは檜山および胆振支庁管内でやや多発したほかは、全道的にやや少ない発生であった。

3.大豆・小豆の茎疫病      発生量  多
普及センターからの報告によると、一般ほでは空知および上川支庁管内の小豆で特に多発し、全道的に多発生であった。

4.小豆・菜豆の炭そ病      発生量  やや少
芽室町の予察ほ(菜豆)での発生量はやや少であった。

5.菌核病             発生量  少
芽室町の予察ほ(菜豆)での発生量は少であった。普及センターからの報告によると、一般ほの小豆では少発生であった。

6.灰色かび病           発生量  少
予察ほにおける発生量は、長沼町の小豆でやや多、芽室町の菜豆でやや少から並であった。普及センターからの報告によると、一般ほの小豆では空知支庁管内の一部でやや多発したほかは、少発生であった。

7.小豆のアズキノメイガ     発生量  並
芽室町の予察ほでは成虫の初発期が6月21日(平年:7月1日)と早かったが、長沼町では7月5日(平年:7月6日)と平年並であった。発生量は平年並の少発生となっている。
8.アブラムシ類      発生量  やや少
大豆のジャガイモヒゲナガアブラムシは8月に入ってから減少し、全道的に少なめの発生となった。
9.食葉性鱗翅目幼虫      発生量  並
8月30日現在、大豆の被害程度は長沼町で32(平年:34.8)と平年並、訓子府町で27(平年:20. 3)でやや多め、小豆では、長沼町で22(平年:21.3)、訓子府町で16(平年:13.2)と平年並になっている。

D.ばれいしょ

1.疫病             発生量  少
予察ほにおける発生量は、長沼町の「農林1号」で少なかったほかは平年並の発生であった。普及センターからの報告によると、一般ほにおける発生量は、全道的に少発生であった。
予察ほでの発生状況
地点 品種名   発病度
8.II 8.IV 8.VI
大野町 男爵薯 本年 100.0 - -
平年 100.0 - -
長沼町 男爵薯 本年 29.5 98.0 -
平年 42.8 91.3 100.0
農林1号 本年 8.0 8.5 18.5
平年 26.2 43.8 66.5
訓子府町 男爵薯 本年 - - -
平年 72.6 88.9 100.0
紅丸 本年 30.5 - -
平年 61.2 80.9 87.9
芽室町 男爵薯 本年 100.0 - -
平年 77.7 88.2 88.9
紅丸 本年 92.0 100.0 -
平年 71.8 81.3 88.9
注)訓子府町では夏疫病が多発し調査が途中で不能となった。
2.アブラムシ類       発生量  やや少
訓子府町・芽室町・長沼町の予察ほでは、ジャガイモヒゲナガアブラムシ・ワタアブラムシ・モモアカアブラムシの発生は少なかった。
後半(てんさい、りんご、たまねぎ、あぶらな科野菜)へ続く

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