平成12年度 病害虫発生予察情報 第21号

7月月報

平成12年8月14日 北海道病害虫防除所

(連絡先:予察課 Tel.01238(9)2080(内)323

     Fax.01238(9)2082)

 


前編 後編
気象概況
A.水稲
B.小麦
C.豆類
D.ばれいしょ

E.てん菜
F.りんご
G.たまねぎ
H.あぶらな科野菜

I.気象概況

──『高温・多雨・寡照』低気圧や前線の影響で大雨、月末に猛暑──

上旬は気圧の谷の影響で、曇りや雨の日が多く、8〜9日は台風第3号の影響を受け、東部を中心に大雨となった。中旬の前半は高気圧の張り出しで晴れて、真夏日の所もあった。それ以降は低気圧や前線の影響で、全道的に大雨となった日が多かった。気温はかなり高い日が多く、特に月末は、太平洋高気圧に覆われ厳しい暑さとなった。

上旬:1日は気圧の谷の影響で曇って南西部中心に雨が降った。2〜7日は気圧の谷の影響を受けた。2〜3日は全道的に雨が降り、総降水量は上士幌町糠平86ミリ等多い所で60〜80ミリ。なお、3日は日本海側から十勝管内にかけ雷が発生。4日は概ね曇った。5〜6日は内陸部でまとまった雨が降り、総降水量は多い所で30〜50ミリ。7日は霧又は弱い雨が降ったが、日本海側や内陸部では晴れた。8〜9日は台風第3号が三陸沖から釧路沖に進み、東部を中心に大荒れとなった。総降水量は広尾195ミリ、えりも町目黒169ミリ、大樹120ミリ等。最大風速はえりも岬で31メートル。10日は高気圧に覆われ概ね晴れたが、日本海側の一部で曇った。

中旬:11日は高気圧に覆われ概ね晴れた。札幌で今年初の真夏日(31.0℃)。12〜13日は気圧の谷の影響で雨が降り、総降水量は多い所で40〜50ミリ等。14日は高気圧張り出しで概ね晴れて真夏日の所が多かったが、東部の山沿いではにわか雨が降った。15〜16日は気圧の谷の影響で北部や上川と東部の山沿いを中心に局地的に雷を伴い大雨となった。日降水量は15日滝上91ミリ、苫前町古丹別76ミリ、16日弟子屈97ミリ等。17日は気圧の谷や前線の影響で雨となり、降水量は日本海側の多い所で30〜50ミリ。18日は北海道南岸を通過した低気圧の影響で雨が降った。降水量は太平洋側を中心に多い所で40〜70ミリ。19日は気圧の谷の影響で太平洋側を中心に曇ったが、北部や日本海側では晴れた所が多かった。20日は高気圧の張り出しで北部やオホーツク海側では晴れたが、その他は曇った。

下旬:21日は気圧の谷の影響で日本海側を中心に大雨となった。降水量は東川町旭岳72ミリ等多い所で50〜70ミリ。22日は前線の接近で日本海側を中心に雨が降ったが、内陸やオホーツク海側では真夏日の所が多かった。23〜26日は前線の影響で全道的に雨が降り、日本海側を中心に断続的に強い雨となった。日降水量は23〜24日は多い所で40〜60ミリ、25日は夕張117ミリ、26日は日高門別92ミリ等。総降水量は夕張204ミリ、旭川155ミリ等多い所で150〜200ミリに達した。特に25日は雷を伴い激しい雨が降り、浸水・落雷による停電・交通障害等が発生した。また、24日は内陸の多くで真夏日となった。27日は北部や東部では前線の影響で曇りや雨の所があったが、日本海側から天気は回復し晴れた所が多かった。28日は高気圧に覆われ、内陸部で真夏日の所もあったが、東部は気圧の谷の影響で、曇りや雨となった。29日は気圧の谷の影響で全道的に曇って、南西部で弱い雨が降った所もあった。30〜31日は太平洋高気圧に覆われ、太平洋側の一部を除き真夏日となり、厳しい暑さとなった。日最高気温は、30日江差34.0℃、31日網走37.0℃、札幌36.0℃等、各地で7月の第1位の高温となり、北見枝幸では35.0℃と観測史上第1位の高温となった。

気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 +2.1℃ かなり高 160% やや多 81% やや少
太平洋側8地点平均 +2.2℃ かなり高 132% やや多 92%
オホーツク海側4地点平均 +2.3℃ かなり高 141% やや多 75% かなり少
日本海側10地点平均 +1.9℃ かなり高 189% かなり多 76% やや少


II.病害虫発生概況

A.水稲

1.いもち病(葉いもち)     発生期  やや早   発生量  やや多
予察田での葉いもちの初発は、大野町・岩見沢市では平年より早く、比布町では平年並であった。発生量は、大野町・岩見沢市では平年より多く、比布町では少なく推移している。普及センターからの報告によると、一般田では全道的に発生が認められ、一部の地域では出穂前にずりこんだほ場もみられた。(7月5日付け注意報第9号)。
地点 品種名 葉いもち初発日 発病度 平年数
7.II 7.IV 7.VI
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 7月7日 - 4.0 - 22.0 - 27.0 - 0
しまひかり 7月7日 7月15日 2.0 0.6 25.0 10.5 34.0 29.2 10
岩見沢市 キタヒカリ 7月6日 7月11日 1.0 0.4 22.0 6.9 48.0 22.7 10
きらら397 7月6日 7月6日 0.0 0.2 10.0 4.5 27.0 8.5 10
比布町 きらら397 7月17日 7月18日 0.0 0.2 2.0 5.2 17.0 18.3 6
ほしのゆめ 7月17日 7月15日 0.0 0.3 3.0 11.5 23.0 30.0 4

2.紋枯病   発生期  やや早   発生量  少
予察田における発生期・発生量は下表のとおりであった。
地点 品種名 初発日 発病度 平年数
7.IV 7.VI
本年 平年 本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 8月2日 - 0 - 0 - 0
しまひかり 8月1日 8月2日 0 0 0 2.8 10
岩見沢市 キタヒカリ 7月31日 8月8日 0 0 0 0.1 10

3.アカヒゲホソミドリカスミカメ  発生期  やや早  発生量 やや多
予察灯による第2回成虫の発生期は、比布町で7月19日(平年:7月22日)と平年よりやや早かった。予察灯での誘殺数および秋まき小麦畑での発生量は多いが、本田での発生量は現在のところ平年並である。普及センターからの報告によると、全道的に畦畔すくい取り数がやや多くなっている。(7月18日付け注意報第11号、8月3日付け注意報第12号)
アカヒゲホソミドリカスミカメの誘殺・捕殺数
月・半旬 予察灯による誘殺数 水田すくい取りによる捕殺数
大野町 岩見沢市 比布町 大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
7・I 7 1.9 11 14.9 3 4.8 0.0 2.5 0.0 1.0  6.7 1.3
7・II 1 0.8 16 64.0 5 0.5 0.0 1.0 0.0 0.5 0.0 0.6
7・III 19 2.4 250 131.1 23 2.5  0.0 0.0 0.0 1.3 1.7 0.6
7・IV 73 8.8 51 78.5 5 9.3  0.0 0.8 5.0 3.1 0.0 0.4
7・V 120 25.0 5066 324.6 101 53.2 0.0 2.0 31.7 3.7 0.0 1.1
7・VI 100 42.8 2285 1483.2 353 89.8 1.7 0.3 19.5 23.4 4.0 8.1
注)予察灯は岩見沢市では20W青色蛍光管、比布町および大野町では100W白色灯を使用。
  水田すくい取り数は20回振り×5日分の合計値。
4.ニカメイガ    発生期 やや早  発生量 やや少
成虫のフェロモントラップによる初誘殺は大野町で7月5日(平年:6月30日)とやや遅く、岩見沢市では6月4半旬(前年:7月1半旬)と早かった。誘殺数は両定点とも平年より少なかった。
 
5.ヒメトビウンカ    発生期  やや早  発生量 多  
第2回成虫の発生期は比布町で7月12日(平年:7月17日)とやや早かった。水田のすくい取りでは各予察田とも多発傾向である。各普及センターからの報告では、空知西部と日高西部普及センターで多めの発生となっている。
月・半旬 水田すくい取りによる捕殺数
大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年
7・I 0.0 0.0 1.3 10.3 0.0 2.4
7・II 5.0 0.5 0.0 11.6 1.7 0.3
7・III 0.0 0.3 10.0 18.0 1.7 2.7
7・IV 10.0 0.8 100.0 43.8 20.0 3.9
7・V 0.0 1.5 175.0 27.6 37.5 19.7
7・VI 58.4 0.9 292.5 69.8 234.0 82.4

6.セジロウンカ   発生期  やや早  発生量  多
水田での黄色水盤による初発は、比布町で5月26日(平年:5月31日)と平年よりやや早く、大野町で5月24日(平年:5月22日)、岩見沢市で6月1半旬(平年:6月1半旬)と平年並であった。予察灯による誘殺数は各定点とも平年よりやや多くなっており、水田での発生量も多くなっている。
月・半旬 予察灯による誘殺数 水田すくい取りによる捕殺数
大野町 岩見沢市 比布町 大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
7・I 0 0.1 0 0.0 0 0.0 2.5 12.5 0.0 0.2 0.0 0.0
7・II  0 1.4 0 0.1 0 0.2 10.0 12.5 0.0 0.0 0.0 0.0
7・III  25 0.2 2 0.1 0 0.0 0.0 11.0 0.0 0.8 0.0 0.0
7・IV  36 0.2 2 0.1 0 0.0 35.0 1.5 1.7 0.7 0.0 0.0
7・V 1236 7.3 0 0.4 33 0.2 55.0 20.8 60.0 1.9 25.0 0.3
7・VI 585 44.6 15 10.0 33 5.7 90.0 18.6 49.5 6.6 46.0 2.5
注)予察灯は岩見沢市では20W青色蛍光管、比布町および大野町では100W白色灯を使用。
  水田すくい取り数は20回振り×5日分の合計値。
7.イネドロオイムシ    発生量  やや多   
大野町、岩見沢市では被害葉率は平年よりも多めに推移したが、比布町では平年より少なかった。

8.フタオビコヤガ    発生期  やや早  発生量 やや多
第2回成虫の発生期は大野町で6月26日(平年:6月30日)と平年よりやや早かった。被害葉率は岩見沢市で平年並であったが、大野町・比布町で多めとなった。
月・半旬 予察灯による誘殺数 被害葉率
大野町 岩見沢市 比布町 大野町 岩見沢市 比布町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
7・I 130 5.4 47 15.4 28 25.8 0.4 0.0 4.1 3.0 2.2 0.2
7・II 21 14.4 89 39.8 38 38.7 0.3 0.0 2.1 1.9 1.3 0.2
7・III  4 8.9 32 75.7 33 57.7 - 0.2 2.0 1.6 1.6 0.4
7・IV  0 6.9 3 32.0 5 14.2 3.7 0.3 3.2 1.2 6.2 1.3
7・V  4 30.6 4 5.6 8 5.7 - 0.8 4.4 3.5 8.9 2.7
7・VI 241 52.3 82 8.5 1688 54.8 4.4 0.9 5.4 7.4 10.0 4.3
注)予察灯は岩見沢市では20W青色蛍光管、比布町および大野町では100W白色灯を使用。
  水田すくい取り数は20回振り×5日分の合計値。

B.小麦

1.秋まき小麦の赤さび病       発生量  やや多
長沼町および訓子府町の予察ほでの発生量はやや多かった。
2.秋まき小麦のうどんこ病      発生量  並 
各予察ほとも平年並の発生量であった。
3.秋まき小麦の赤かび病       発生量  やや少
長沼町の予察ほでの発生量は極少発生であった。普及センターからの報告によると、一般ほでの発生量は石狩および十勝支庁管内で少なく、空知・上川および網走支庁管内で平年並、胆振・釧路支庁管内では多かった。全道的にはやや少発生であった。
予察ほでの発生状況
地点 品種名 病穂率(%) 平年数 本年の病菌別割合(%)
本年 平年 F.niv F.ave F.gra F.cul
長沼町 チホクコムギ 0.0 6.0 10 0 0 100 0
ホクシン 0.0 2.5 5 0 20 80 0
訓子府町 チホクコムギ 33.0 22.9 10 0 60.7 36.4 3.0
ホクシン 24.0 - 10 0 65.0 30.0 5.0
芽室町 チホクコムギ 3.0 - 0  
ホクシン 3.0 19.0 2

4.アブラムシ類    発生量 少
訓子府町・長沼町ともアブラムシの発生は少なかった。普及センターからの報告によると、全般に発生が少なかった。

C.豆類

1.大豆のべと病    発生期  早   発生量  少
長沼町の予察ほでの初発はキタホマレで6月30日(平年:7月23日)、トヨムスメで6月30日(平年:7月24日)と平年より3週間以上も早かったが、その後病勢が衰え発生量は平年より少なく推移している。

2.大豆のわい化病    発生量  少
長沼町の予察ほでの発生量は平年より少なく、訓子府町では平年より多かった。普及センターからの報告によると、一般ほでの発生量は上川・網走および胆振支庁管内で平年より少なかった。
予察ほでの発生状況
地点 品種名 病株率(%)
本年 平年
長沼町 キタホマレ 11.0 26.7
トヨムスメ 10.0 42.5
訓子府町 トヨコマチ 8.0 2.8
注)7月4半旬の調査

3.大豆・小豆の茎疫病      発生量  多
普及センターからの報告によると一般ほでの発生量は、空知支庁管内でやや多発し、上川支庁管内では多発し、一部のほ場では病株率が100%であった。網走・胆振支庁管内では少発生であった。全道的には多発生であった。
4.菌核病             発生期  やや早   発生量  並
芽室町の予察ほでの菜豆の初発は7月22日(平年:7月28日)で平年より早く、発生量は平年より少なく推移している。普及センターからの報告によると、一般ほでの発生量は、網走・胆振支庁管内では未発生、空知・上川支庁管内では平年並に推移している。
予察ほでの発生状況
地点 品種名   初発月日 発病株率(%) 発病度 平年数
7.IV 7.VI 7.IV 7.VI
芽室町 大正金時 本年 7月22日 0 12.0  0  3.0 10
平年 7月28日 0 25.3  0  7.4

5.灰色かび病           発生期  早   発生量  やや少
芽室町の予察ほでの菜豆の初発は7月17日(平年:7月24日)で平年より早く、発生量は平年並であった。長沼町の予察ほの小豆では7月中の発生はなかった(8月7日初発:平年8月15日)。普及センターからの報告によると、一般ほでは、空知・網走・胆振支庁管内では未発生である。上川支庁管内ではやや少発生である。
予察ほでの発生状況
地点 品種名   初発月日 発病株率(%) 発病度 平年数
7.IV 7.VI 7.IV 7.VI
芽室町 大正金時 本年 7月17日 21.3 49.3 5.3  12.3 2
平年 7月26日 0 12.3  0  11.5

6.アズキノメイガ     発生期  早  発生量  少
長沼町の予察灯では成虫の初発期が7月5日(平年:7月6日)と平年並で、芽室町では6月21日(平年:7月1日)と早かった。誘殺数は芽室町・長沼町とも少なかった。
7.アブラムシ類      発生量  やや少
訓子府町、長沼町の予察ほでは平年より少なめの発生量であった。長沼町の小豆では7月中旬にマメアブラムシがやや多かったが、その後の降雨により激減した。

D.ばれいしょ

1.疫病              発生期  並   発生量  やや少
予察ほでの初発は、大野町・芽室町で平年並であったが、訓子府町では早く、長沼町では遅かった。発生量は、芽室町の「男爵薯」で多発しているほかは少から平年並の発生である。普及センターからの報告によると、一般ほでの発生量は上川・胆振支庁管内の一部で多発している他は、少発生である。
予察ほでの発生状況
地点 品種名   初発日 発病度
7.I 7.II 7.III 7.IV 7.V 7.VI
大野町 男爵薯 本年 7月7日 0.0 1.0 11.0 29.0 68.0 96.0
平年 7月9日 6.6 21.8 35.6 46.2 57.8 80.9
長沼町 男爵薯 本年 7月25日 0.0 0.0 0.0 0.0 0.5 20.5
平年 7月15日 0.0 0.3 1.4 8.8 13.9 19.9
農林1号 本年 7月31日 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0 0.0
平年 7月16日 0.0 0.2 0.6 2.6 4.9 9.6
訓子府町 男爵薯 本年 7月12日 0.0 0.0 0.5 1.5 12.0 22.0
平年 7月17日 2.3 2.6 5.6 12.5 29.6 16.6
紅丸 本年 7月11日 0.0 0.0 0.0 0.5 11.5 15.5
平年 7月22日 0.0 1.9 2.5 8.8 24.5 32.9
芽室町 男爵薯 本年 7月12日 0.0 0.0 1.0 4.0 38.0 87.0
平年 7月14日 0.0 0.9 4.6 19.7 43.0 58.6
紅丸 本年 7月15日 0.0 0.0 2.0 5.0 27.0 58.0
平年 7月13日 0.2 3.2 6.6 18.5 37.5 51.4
注)平年値は各地点とも10年。
2.アブラムシ類       発生量 並〜やや多
ジャガイモヒゲナガアブラムシは7月前半は6月に引き続き多めの発生であったが、後半は少なくなった。モモアカアブラムシの発生は少ないが、ワタアブラムシは訓子府町で多めとなった。普及センターからの報告によると、全道的にアブラムシの寄生株率は低くなっている。
後半(てんさい、りんご、たまねぎ、あぶらな科野菜)へ続く

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