平成12年度 病害虫発生予察情報 第16号

6月月報

平成12年7月12日 北海道病害虫防除所

(連絡先:予察課 Tel.01238(9)2080(内)323

     Fax.01238(9)2082)

 


前編 後編
気象概況
A.水稲
B.小麦
C.豆類
D.ばれいしょ

E.てん菜
F.りんご
G.たまねぎ
H.あぶらな科野菜

I.気象概況

──『高温・並雨・寡照』上旬寡照、中旬太平洋側中心に少雨──

上旬は低気圧や気圧の谷の影響を受け、曇りや雨の日が多かった。その後も周期的に気圧の谷が通過したが、天気の崩れは小さく、高気圧に覆われ晴れて、内陸部を中心に暑い日もあった。このため、太平洋側を中心に降水の少ない状態が続いたが、月末の27〜28日に低気圧の影響で全道的にまとまった雨が降り、南西部では大雨となった。

上旬:1日は気圧の谷の影響で太平洋側東部を中心に雨が降り、降水量は多い所で40〜70ミリ。2日は気圧の谷の影響で全道的に曇りや霧雨で、太平洋側東部では朝まで雨が降ったが、南西部では日中晴れた。3〜4日は気圧の谷や上空の寒気の影響で雨が降り、日本海側では雷雨の所があった。5日は気圧の谷の影響で北部や太平洋側東部で曇ったが、その他は晴れた所が多かった。6〜7日は寒冷前線が通過し各地で雨が降り、寿都・旭川で雷を伴った。総降水量は北部で40〜70ミリ。なお、前線の通過後は太平洋側や南西部では晴れた。8日は気圧の谷や上空の寒気の影響で全道的に雨が降り、南西部では雷を伴った。9日は低気圧の影響で全道的に雨が降った。10日は気圧の谷の影響で曇りの所が多く、北部や内陸を中心に所々で雨が降った。

中旬:11日〜12日は気圧の谷の影響で曇りの所が多く、北部や内陸部を中心に雨が降った。13日は高気圧の張り出しに入って概ね晴れたが、太平洋側で霧となった。14日は気圧の谷の影響で日本海側やオホーツク海側では曇りや雨、太平洋側では霧や霧雨となった。15日は東部で晴れた他は気圧の谷の影響で曇って所々で雨が降った。16〜18日は、初め気圧の谷の影響で東部で雨が降ったが、16日昼過ぎからは高気圧の張り出しの中に入って晴れた。特に18日は網走・十勝管内で今年初の真夏日を記録した。日最高気温は佐呂間31.4℃、帯広30.8℃等。また、海岸部では朝晩は霧となった。19日は低気圧が通過し北部を中心に雨が降った。20日は気圧の谷の影響で、北部や日本海側では曇りや霧雨、網走では雷を観測したが、その他は概ね晴れた。

下旬:21日は気圧の谷の影響で北部や日本海側では曇りで霧雨の降った所があったが、その他は晴れて十勝管内では真夏日を記録した。22日は気圧の谷の影響で南西部から太平洋側にかけて曇った。23〜26日はオホーツク海から北海道の南東海上へ進んだ高気圧の張り出しで概ね晴れて、夏日の所もあったが、太平洋側やオホーツク海側の沿岸部を中心に曇りや霧となった。27〜28日は低気圧の影響で全道的に雨が降り、南西部を中心に大雨となった。総降水量は登別市カルルス145ミリ、白老128ミリ、長万部113ミリ、豊浦町大岸71ミリ等。29日は気圧の谷の影響で概ね曇ったが、日高・十勝・網走各管内で晴れた所もあった。30日は網走管内では晴れたが、その他は気圧の谷の影響で曇って南西部では午後から雨が降り出した。

気候表
  気温偏差 階級 降水比 階級 日照比 階級
北海道22地点平均 +0.8 やや高 84% 90% やや少
太平洋側8地点平均 +1.2 やや高 67% やや少 95%
オホーツク海側4地点平均 +0.8 78% 92%
日本海側10地点平均 +0.4 100% 86% やや少


II.病害虫発生概況

A.水稲

1.いもち病(葉いもち)     発生期 − (本田)   発生量  −
各予察田における6月中の発生は、さし苗で平年より早く、本田では未発生であった。なお、7月に入って大野町および岩見沢市では、本田でも平年より早く初発が確認された(7月5日付け注意報第9号)。
地点 品種名 さし苗初発 本田初発 平年数
本年 平年 本年 平年
大野町 きらら397 6月28日 - 7月7日 - 0
しまひかり 6月28日 7月7日 7月7日 7月15日 10
岩見沢市 キタヒカリ 6月21日 6月24日 7月6日 7月11日 10
きらら397 6月19日 7月7日 7月6日 7月6日 10
比布町 きらら397 6月24日 6月29日 - 7月18日 6
ほしのゆめ 6月21日 6月19日 - 7月15日 4
注)大野町のさし苗および比布町の「きらら397」のさし苗の平年数は4年。
  比布町の「ほしのゆめ」のさし苗の平年数は2年。
2.縞葉枯病   発生量 並〜やや多
普及センターからの報告によると、渡島支庁管内では平年並の少発生、上川支庁管内ではやや多い発生であった。
3.イネミギワバエ   発生量   少
大野町の予察田での発生は少なく、各普及センターからの報告でも発生は少ない。
月半旬 大野町
産卵葉率 被害葉率
本年 平年 本年 平年
6.I 0.9 1.3 0.3 1.5
6.II 1.0 1.3 0.0 2.1
6.III 0.8 1.1 0.2 2.7
6.IV 0 0.2 0.2 2.4
6.V 0 0.2 0.1 1.2
6.VI 0 0 0.2 0.5

 
4.ヒメトビウンカ    発生量  やや多
大野町・岩見沢市・比布町とも、5月下旬から6月上旬にかけて畦畔でのすくい取り数は多かったものの、水田内でのすくい取り数は平年並となっている。
すくい取り成虫数(20回振り×5日間の合計値)
月・半旬 大野町 岩見沢市 比布町
畦畔 本田 畦畔 本田 畦畔 本田
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
6・I 18.3 1.7 0.0 0.0 30.0 4.8 0.0 0.0 43.3 30.6  1.7 0.7
6・II 0.0 1.5 0.0 0.5 5.0 4.3 0.0 0.0 55.0 18.6 0.0 0.0
6・III 0.0 2.0 0.0 0.5 3.3 2.5  1.7 0.0 41.7 11.7 0.0 1.4
6・IV 0.0 1.0 0.0 1.0 0.0 1.6  0.0 0.0 0.0 5.6 0.0 1.8
6・V 0.0 0.5 0.0 0.3 0.0 0.6 1.7 0.5 3.3 2.4 1.7 0.8
6・VI 0.0 1.0 0.0 0.3 0.0 1.0 0.0 0.2 0.0 1.0 5.0 4.5

5.イネハモグリバエ    発生期  −  発生量  少 
大野町・岩見沢市・比布町の予察田では成虫が確認されず、被害も認められていない。
6.イネドロオイムシ    発生量  並
水田内における成虫の初発は、大野町、岩見沢市で平年より早かったが、比布町では平年並であった。各予察田での幼虫の発生は平年より早くなったが、発生量は大野町で多く、岩見沢市で平年並、比布町で少なめとなっている。各普及センターからの報告では上川北部で発生量は多めであるが、ほかは平年並である。
 
月・半旬 大野町 岩見沢市 比布町
卵塊数 幼虫数 卵塊数 幼虫数 卵塊数 幼虫数
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
6・I 15.0 0.3 0.0 0.0 1.5 0.4 0.0 0.0 1.0 1.3  0.0 0.0
6・II 19.0 1.1 0.0 0.0 3.0 0.7 0.0 0.0 2.0 3.7 0.0 0.0
6・III 24.0 2.9 52.0 4.3 4.0 3.5  0.5 0.8 3.0 10.5 1.0 5.0
6・IV 16.0 3.2 144.0 4.3 8.5 6.7  9.5 4.3 4.0 11.8 22.0 15.2
6・V 2.0 4.4 266.0 6.6 13.5 12.6 19.0 5.4 3.0 15.8 20.0 36.2
6・VI 4.0 5.1 185.0 12.1 16.0 9.5 56.5 23.6 2.0 9.0 32.0 87.8

7.フタオビコヤガ    発生期  早   発生量  やや多
 岩見沢市の予察田では5月6半旬に産卵が認められている。
8.アカヒゲホソミドリカスミカメ     発生期  やや早   発生量 やや多
畦畔での第1回成虫の初発は、大野町で6月14日(平年:6月19日)と平年よりやや早かったものの、比布町では6月16日(平年:6月15日)と平年並であった。畦畔でのすくい取りでは、大野町、岩見沢市、比布町とも多めとなっている。
9.イネミズゾウムシ    発生期  やや早   発生量  やや多
大野町の予察田では5月6半旬(平年6月3半旬)より越冬世代成虫による食害が認められ、比布町でも5月6半旬より認められている。

B.小麦

1.うどんこ病      発生量  並 
各予察ほとも発生量はやや多〜多であった。普及センターからの報告によると、多発したほ場も散見されたが、全道的には平年並の発生であった。
地点 項目 品種名   月・半旬 平年数
6・II 6・IV 6・VI
長沼町


チホクコムギ 本年 34.4 24.8 33.4 10
平年 16.7 23.4 22.9
ホクシン 本年  4.4  3.0  0 5
平年  1.4.  2.8  2.3




チホクコムギ 本年  4.1.  2.1  4.3 1
平年  1.5  2.8.0  2.0
ホクシン 本年  0.1  0.05  0 1
平年  0.1  0.1  0
訓子府町 チホクコムギ 本年 11.2 10.4 18.5 10
平年  5.0  5.7  7.6
ホクシン 本年  3.5  2.7  1.6 0
芽室町 チホクコムギ 本年  3.9 15.8  9.1 0
ホクシン 本年  1.9  1.5.0  1.7 2
平年  0.7  0.4  0.5


2.赤さび病     発生量 やや多
長沼町の予察ほでは多発生であった。普及センターからの報告によると、檜山支庁および空知支庁管内の一部で多発した。
地点 項目 品種名   月・半旬 平年数
6・II 6・IV 6・VI
長沼町


チホクコムギ 本年  9.4 23.8 32.4 10
平年  2.4  7.7 14.4
ホクシン 本年 22.1 58.2 92.5 5
平年  7.4 26.3 46.3




チホクコムギ 本年  0.1  1.1  5.2 1
平年  0.2  6.9.0 10.5
ホクシン 本年  0.9  12.7 26.7 1
平年  3.0  19.6 17.8
訓子府町 赤錆不知1号 本年  0  0.8  4.4 10
平年  0.2  0.9  8.6
チホクコムギ 本年  0  0.02  0.06 10
平年  0.0  0.01  0.02
ホクシン 本年  0  0.4  1.0 0
芽室町 チホクコムギ 本年  0  0  0.1 0
ホクシン 本年  0.1  0.70  2.6 1
平年  0.8  3.9 13.1

3.ムギクロハモグリバエ    発生量 少
訓子府町の予察ほでは、成虫の発生期は6月2日(平年:5月27日)と遅く、発生量は少なく被害も少なかった。
4.ムギキモグリバエ    発生量 少
訓子府町の予察ほでは、成虫の初発は6月12日(平年:5月26日)と遅く、発生量は少ない
5.アブラムシ類    発生量 少
訓子府町の予察ほでは、ムギクビレアブラムシ、ムギヒゲナガアブラムシとも発生量は平年より少ない。

C.豆類

1.べと病(大豆)     発生期 早
長沼町の予察ほにおける初発期は平年より早かった。
地点 品種名 初発日 平年数
本年 平年
長沼町 キタホマレ 6月30日 7月23日 10
トヨムスメ 6月30日 7月24日 2

2.炭そ病(菜豆)    発生期 早   発生量 やや少
芽室町の予察ほでは、初発期は子葉・茎葉とも平年より早く、発生量はやや少なく推移している。
地点 品種名   初発日 発病度 平年数
子葉 茎葉 6.II 6.IV 6.VI
芽室町 常富長鶉 本年 6月6日 6月14日  0  3.7  3.7 10
平年 6月13日 6月21日  1.0  2.2  6.4

D.ばれいしょ

1.疫病     発生期 並  発生量 −
各予察ほとも6月中に初発は確認されなかった。7月7日に大野町の予察ほで初発が確認された。普及センターからの報告によると、一般ほでは未発生である。なお、疫病初発予測システム(FLABS)による初発予測結果は以下の表のとおりである。
地点 品種名 初発日 平年数 FLABSによる初発予測結果
本年 平年 萌芽日 基準日 予測初発日
大野町 男爵薯 7月7日 7月9日 10 5月19日 6月29日 7月14日
長沼町 男爵薯 - 7月15日 10 6月10日 7月7日 7月20日
紅丸 - 7月16日 10 6月11日 7月7日 7月20日
訓子府町 男爵薯 - 7月17日 10 6月2日 6月28日 7月13日
紅丸 - 7月22日 10 6月2日 6月28日 7月13日
芽室町 男爵薯 - 7月14日 10 6月1日 6月28日 7月13日
紅丸 - 7月13日 10 6月1日 6月28日 7月13日

2.アブラムシ類       発生量 並〜やや多
長沼町の予察ほではジャガイモヒゲナガアブラムシの発生量は多めで、訓子府町ではワタアブラムシが多めとなっている。モモアカアブラムシの発生量は少ない。
10株当たり寄生頭数
月半旬 ジャガイモヒゲナガアブラムシ モモアカアブラムシ ワタアブラムシ
長沼町 訓子府町 長沼町 訓子府町 長沼町 訓子府町
本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年 本年 平年
6.I  0  0.3 - -  0  0.0 - - -  0 - -
6.II  0  1.1 -  0.1  0  0.1 -  0  0  0 -  0
6.III  0  2.1  0  0.4  0  0.1  0  0  0  0  0  0
6.IV  8  2.1  1  1.4  0  1.5  0  0  0  4.7  0  0
6.V  9  5.1  0.5  2.8  0  2.6  1.5  0  0  0 11.0  0.3
6.VI  7  5.9  2.5  4.4  1  1.7  0  0.1  1  0.1 12.5  0.1
後半(てんさい、りんご、たまねぎ、あぶらな科野菜)へ続く

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