北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[令和2年度新発生病害虫]


ぶどうのコスズメ(新寄主)

 

 

 

 令和元年7月上旬に、ニセコ町の有機栽培の醸造用ぶどう園地において、ぶどうの葉を食害する鱗翅目幼虫の発生が認められた。発見時の体長は1.4cmで若齢であった。その後、7月下旬には体長5.5㎝程度まで成長し、8月上旬には蛹化した。同年10月上旬には、上川地方の無農薬栽培の醸造用ぶどう園地において、ぶどうの葉を食害する体長4cm程度の中齢幼虫が認められ、この幼虫は10月中旬に蛹化した。いずれも、その後の飼育において成虫の羽化には至らなかった。これら幼虫は老齢時の体長が5.5cm程度で、体色は褐色、胸部から腹部の背側方に淡色の眼状紋を4対伴う。尾端背面には尾状の突起を伴い、スズメガ科幼虫と判断された。一方、令和2年5月下旬には、岩見沢市の醸造用ぶどう栽培園地において樹下の土中から蛹が採取された。当該園地では、令和元年9月に同種と思われる若齢幼虫の発生が確認されている。この蛹は、周辺の植生から、ぶどうを加害していたものと推察された。さらに、6月上旬には成虫が羽化し、この成虫は前翅に認められる縦条、胸部背面に見られる淡色縦条などにより、コスズメTheretra japonica (Boisduval)と同定された。前述の幼虫も形態や色彩からコスズメと同定された。本種は、殺虫剤未使用のぶどう園では比較的普通に発生が認められ、個体あたりの食害量も多いことから、殺虫剤未使用でのぶどう栽培においては捕殺などの対処が必要であると考えられた。

(中央農試)



ぶどうのコスズメ (橋本 原図)


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