北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[令和2年度新発生病害虫]


ぶどうのブドウキンモンツヤコガ(新寄主)

 

 

 

 令和2年6月下旬、岩見沢市の醸造用ぶどうの殺虫剤不使用栽培園において、葉先付近を1.5cm×1.5cm程度の範囲で、葉内に潜孔して葉の組織を袋状に食害する被害が認められた。被害部は不整形で、潜孔加害によって葉色は淡褐色を呈し、内部にやや扁平で細長い鱗翅目幼虫が認められた。その後、加害を終えた幼虫は潜孔の一部を4mm×2.5mm程度の長楕円形に切り取り、その周縁を綴り合せて形成した「ケース」ごと葉から離脱したり、葉裏の柔毛に付着したりした。このケース周縁には、幼虫が絹糸で形成した長さ1mm程度の灰白色刺状の突起を5本から最大14本伴った。幼虫はケース内で蛹化し、7月下旬には、全長2.5㎜程度の小型の鱗翅目成虫が羽化した。成虫は静止時にはハマキ状で、前翅は茶褐色を呈し、基部1/3に前・後縁をつなぐ銀色の斑紋、前翅中央付近には前縁・後縁にそれぞれ1個、銀色の斑紋を合計3個伴う。同様の被害並びに幼虫は、7月下旬から8月上旬にも同一園地や後志管内ニセコ町の有機栽培園地において認められ、これらからは8月中旬に成虫が羽化し、年間数世代を経過しているものと考えられた。本種は、加害様相や成虫の形態がブドウキンモンツヤコガAntispila uenoi Kurokoに合致し、鹿児島大学農学部の坂巻祥孝准教授により同種と同定された。


(中央農試)




ぶどうのブドウキンモンツヤコガ(被害葉) (岩﨑 原図)


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