北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[令和2年度新発生病害虫]
ぶどうのミヤマスカシクロバ(新寄主)
令和2年5月中旬から6月中旬にかけて、日高、上川および後志地方の醸造用ぶどう有機栽培園地において、葉を食害する鱗翅目幼虫が認められた。5月中旬には体長2mm程度の若齢幼虫が展開中の芽の内部に生息していた。6月上旬には体長10mm程度の中齢幼虫が葉の上面に認められ、若齢幼虫は展開中の葉を、中齢以降の幼虫はしばしば下面の綿毛部を残して葉を削り取るように食害した。当該幼虫は飼育条件下において6月中旬頃には老齢となり、6月中・下旬には褐色で扁平な長楕円形の繭を形成した。体長20㎜程度の老齢幼虫は、全体に淡黄色の体色で、背面の正中線上は中央に乳白色の縦条を伴う黄緑色の縦条、身体の側上方には同様の白色、黄緑色の縦条を左右に伴う。身体の各節には、側上方の縦条の上・下に左右2対、白色、褐色の刺毛束と黒色の長刺毛1本を伴う。また頭部は黒色を呈する。この幼虫は、形態や色彩から、ミヤマスカシクロバIlliberis psychina (Oberthür)と同定された。なお、一部の発生確認園地では、4月下旬に萌芽前のぶどう枝上に本種の成虫が認められた。本種幼虫はぶどうを加害し、有機など無防除栽培園地ではブドウスカシクロバと共に葉の食害が激しい事例が少なくない。幼虫の形状は近縁のブドウスカシクロバとよく似ているが、ミヤマスカシクロバは身体の側上方の縦条下に生じる長刺毛が黒色で頭部が黒色を呈するの対し、ブドウスカシクロバでは長刺毛が白色で各節に黒色の長刺毛は1対2本のみで、頭部が淡黄色である。本種の加害期間は5月中旬の冬芽の萌芽時期頃から6月中旬頃までである。一方、ブドウスカシクロバは6月下旬ころに成虫が発生し、6月上旬から7月下旬頃まで幼虫が葉を加害するものと推察される。ミヤマスカシクロバの成虫は体色が全体に黒色で、青みを帯びた金属光沢を示すブドウスカシクロバとは識別が可能である。
(中央農試)
ぶどうのミヤマスカシクロバ (西脇 原図)
新発生病害虫一覧へ戻る