北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[令和2年度新発生病害虫]
たまねぎの菌糸腐敗病菌による立枯症状(新症状)
平成29年5月中旬から6月にかけて、オホーツクおよび十勝地方の移植たまねぎ栽培ほ場においてりん茎から茎盤部が腐敗・枯凋する立枯症状が頻発した。腐敗部には白色の菌糸とかさぶた状の黒色菌核が付着し、菌核とたまねぎ腐敗組織から糸状菌が分離された。これらの分離菌を床土に接種し、たまねぎを育苗したところ、床土から幼苗に感染し移植後に立枯症状を生じた。
分離菌のPDA平板培地上の培養性質および生育温度反応、にら培地上に形成された胞子の形状と大きさから、本菌はBotrytis属菌であると考えられ、あわせてPCR-RFLP法による類別の結果、Botrytis byssoidea J.C. Walkerと同定した。
本菌は貯蔵中のたまねぎの腐敗を引き起こす菌糸腐敗病(ボトリチス貯蔵腐敗(仮称))の病原菌として知られている。たまねぎの育苗期間中に発生した苗立枯症状から分離された報告はあるものの、病原性は未検討で、また、移植後のほ場における立枯症状の発生については詳細な記録がない。以上のことから、本症状を菌糸腐敗病菌による新症状としてボトリチス立枯症状と提案する。
(北見農試)
ボトリチス立枯症状 (安岡 原図)
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