北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構
[令和2年度新発生病害虫]
とうもろこしのツマジロクサヨトウ(新発生)
令和2年8月、花・野菜技術センター(滝川市)の生食用とうもろこし(スイートコーン)で、葉を食害する鱗翅目幼虫が確認された。展開葉を食害する一方で、1株あたり1~5頭の幼虫が心葉抽出部に潜入して内部を食害していた。下記の幼虫の特徴から、横浜植物防疫所によりツマジロクサヨトウSpodoptera frugiperda (J.E.Smith)と同定された。センター内には他にもスイートコーンの作付はあったが、試験のため通常より遅い7月に播種したほ場だけで被害が認められ、通常の播種期(5月播種)のスイートコーンや、緑肥用ソルガムでは被害は確認されなかった。
9月には渡島地方の生産者ほ場の飼料用とうもろこしで、雌穂20本のうち1本から子実先端付近を食害していた本種幼虫が見つかった。
幼虫の確認に先立ち、8月7日に、中央農業試験場(長沼町)に設置した本種のフェロモントラップに本種雄成虫が捕獲された(横浜植物防疫所同定)。以降、8月中下旬以降、花・野菜技術センター、道南農業試験場(北斗市)などでもフェロモントラップに誘殺が認められた。
本種は葉裏に卵塊で産卵し、ふ化幼虫はヨトウガと同様に集団で葉の裏面から表皮を白く残して食害する。中齢幼虫は展開葉を食害し不定形の穴をあける一方で、中齢から老齢幼虫は茎頂先端部の新葉抽出部に食入して内部で未展開葉を食害する。加害された未展開葉は展開後、横に列状に穴があいたり、切断される場合もあるのが特徴である。雄穂抽出前の被害では上位葉主体の被害となるため子実減収に繋がりやすい。また、絹糸抽出期以降では子実を加害し、雌穂先端から食入する場合と包皮に穿孔する場合とがあり、被害様相だけではオオタバコガとの区別は困難である。
中齢以降の幼虫では、以下の特徴から種の識別が可能となる。頭部は褐色で網目模様があり、頭部から胸部にかけ逆Y字の淡色模様がある。胴体各体節には刺毛の生えた黒点があり、特に腹部末端付近の黒点は大きくて目立ち、ほぼ正方形に配置している。一方、体色は、暗褐色、灰褐色、灰緑色、橙褐色など個体差が大きい。
(中央農試・横浜植防・花野セ・道南農試・渡島農業改良普及センター)
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