北海道病害虫防除所
北海道立総合研究機構

[令和元年度新発生病害虫]


ぶどうのイッシキブドウトリバ(新寄主)

 

 

 

 平成22年8月、栗山町の家庭菜園において、生食用ぶどうの果実内に鱗翅目幼虫が食入する被害が認められた。被害果実は、未成熟のぶどう果粒に直径1mm程度の小さな孔が開き、この周辺には褐色顆粒状の糞粒が糸で綴られるように付着していた。また、果房上には、体長1cm弱の小型の鱗翅目幼虫が認められた。当該幼虫は、体色は淡緑色で、左右の側背方に短褐色の縦条を2列伴う。同年8月には、同管内岩見沢市の醸造用ぶどう栽培園地においても、果房に同様の被害が認められた。園地内の多発場所では、被害果房率が100%近く、幼虫は果房の軸を食害したり、顆粒の基部付近から顆粒内部に食入し、果肉や子実を食害した。加害により、被害顆粒は紫黒色に変色、萎縮し、傷部には灰色かび病を誘発していた。また、果房や樹幹の樹皮片上に、蛹が付着していた。いずれの発生場所においても、幼虫による果実への加害は、7月中旬頃から認められていたとのことであった。本種によると思われる被害は、岩見沢市の発生園地では平成20年の初確認から23年まで、増加傾向にあったとのことである。両発生地から採集した幼虫を飼育したところ、8月中にトリバガ科の成虫が羽化した。羽化虫は、札幌市の櫻井正俊氏により、いずれもイッシキブドウトリバNippoptilia regulus Meyrickと同定された。道内では、1957年以降刊行の北海道病害虫防除提要に、ブドウトリバNippoptilia vitisが発生種としてリストアップされているが、櫻井氏によると、札幌市およびオホーツク地方において採集された本属成虫それぞれ7個体、2個体は全てイッシキブドウトリバだったとのことである。道内におけるブドウトリバの発生有無については確認が必要である。

(中央農試)


ぶどうのイッシキブドウトリバ(幼虫と果実被害) (岩崎 原図)


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